対岸の火事ではない…依然として残る2つの金融不安
こうして当面の金融不安は回避されたものの、筆者のなかには、「これで終息した」と言い切れない2つの不安が残ります。その2つの不安とは、
2.問題の根底にある金融に関わる人のモラル
です。
1.両社の収益が急速に悪化したことの根底にある金利の変化
両社の収益が急速に悪化した根底には、インフレに伴う「金利上昇」と、「短期金利と長短金利の逆転」という金利の変化があります。こうした金利環境は当面続く可能性が高く、銀行が保有する債券の損失は膨らみやすい状況が続きます。また、景気にもマイナスの影響を与えますので、普通に考えれば、融資先のデフォルトリスクも高まるでしょう。
この点について、日本の銀行は「無関係である」といえるでしょうか。答えは、「否」でしょう。
たしかに、日本の銀行は、以前に比べると融資先や預金者等に極端な偏りはなく、与信管理も強化されています。しかし、短期(預金)でお金を調達し、長期債券などの運用で利ざやを稼いでいる基本的な収益構造には、類似点があります。
資産(貸出・運用)と負債(調達)との期間構造がミスマッチな状態は、今後、短期金利と長期金利の形状が変化すれば、銀行の収益を圧迫するリスクがあるので、決して対岸の火事ではありません。日本の銀行も危機意識をもった経営が求められるでしょう。
2.問題の根底にある金融に関わる人のモラル
今回のSVB、CSの問題とリーマンショックとが重なって見えるのが、人の大切なお金を預かる立場にある人の良識、いわばモラルの問題です。今回もまた、「金融に関わる人のモラルの欠如こそが真因ではないか」と筆者は感じます。
良識に照らせば、リーマンショックの原因となった低所得者向けの住宅ローンを組み込んだ派生型金融商品に、実体としての価値に比べて過剰なお金が集まったり、ITバブルの崩壊時のように、特定の産業分野にお金が集中したりすることは不自然で、違和感を持つものです。CSが多額の投資で巨額損失を出し、経営不安を加速させたアルケゴス・キャピタル・マネジメントの投資手法もまた、レバレッジを効かせた派生型金融商品でした。
昨年来の金利環境の急変のように、なにか経済条件が変わると、いままで一見上手くいっていたように見えた仕組みはいとも簡単に崩壊します。私たちは幾度となく、そうしたことを経験してきました。
筆者を含め金融に関わるすべての人は、こうして繰り返し起こる歴史を謙虚に見つめながら、良識に照らして不自然なお金の動きに対する感度を高め、容易に儲かることへの欲望を抑え、お金と誠実に向き合う姿勢、つまり、「大切なお金を、高い専門性を持って誠実に社会・経済に循環させる」という基本的な姿勢を持たなくてはなりません。
しかし、リーマンショックから15年、舌の根も乾かぬうちに、今回のような事象が起きるということは、それとはかけ離れた現実があるのでしょう。
そのことを思うと、決して望まないものの、「超金融緩和下で膨らんだお金が金融不安の火種となって、思わぬところに影を潜めている」と想像しておいたほうがよいかもしれません。
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