(※写真はイメージです/PIXTA)

新規ビジネスの重要性が叫ばれる昨今。次々に新しい企業が生まれていますが、中小企業庁『 小規模企業白書 』によると、5社に1社が5年後には存在しない、という厳しさです。そのようななか、新規ビジネスが市場で生き残るには、ブランディングが必須であると、ブランディングコンサルタントの稲葉大智氏はいいます。本記事では、一時は倒産の危機へ陥るも、大復活を遂げた「Apple」の事例とともに、新規ビジネスにおけるブランディングの重要性について解説します。

本当に、新規ビジネスに「ブランディング」は必要か?

この問いに答えるにあたって、まずブランディングについて、いま一度考えてみたいと思います。いまでも多くの人が、ブランディングとは「見た目と伝え方を整えること」つまり「狭義のデザインである」と捉えています。

 

“商品(サービス)は素敵な見栄えになった! WEBサイトも準備できたし、かっこいい広告も撮影した! ……よし、ブランディングできたし、世の中にローンチだ!”

 

……このビジネスは、市場において瞬間風速的に健闘するかもしれません。しかし、現代社会はあまりにも多くのモノゴト、膨大な情報、そして多様な価値観で溢れ返っています。

 

すぐに似たような商品やサービスが現れて淘汰されるか、限定的な市場浸透で留まるかで、そう長くないうちに、誰もがこのブランドを忘れ去ってしまうでしょう。なぜなら、ビジネスの根幹のデザインに意識が向いていなかったからです。

 

ブランドとは人々の頭のなかで構築されるもの。ビジネスの一挙手一投足が積み上がり、人々のなかにブランドの印象が創り上げられるのです。そのため、すべてのビジネス活動に一貫性がなければ、ブランドの印象は曖昧になり、人々の心に残ることも、ましてや選ばれることもありません。表層部分のデザインだけでは限界があるのです。

 

(出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)
[図表1]人々のブランドの印象 (出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)

 

そういった意味で、ブランディングとは本来、ビジネスをスタートさせたそのときから「始まっている」ものです。

 

「なぜこのビジネスを行うのか」「このビジネスにしかない世の中への提供価値はなにか」「関係するメンバーはどこに向かい・なにを目指すのか」といった要件から、「誰に対して」「なにを生み出し」「どのように届けるのか」といった要件までを、きちんと設計・定義すること、つまり、ビジネスの川上から川下までをデザインすることが、本質的な意味でのブランディング。

 

そう、新規ビジネスにこそブランディングの正しい認識と取組みが必要なのです。

新規ビジネスは「WHYの明確化」から始まる

ブランディングの重要性はわかったけど、じゃあどうしたらいいの? ここからは、この疑問にお答えしていきます。

 

新規ビジネスで陥りがちな罠の1つが、技術や資産など、自社の強み「だけ」に立脚してビジネスを組み立ててしまうことです。たとえば「技術をどう形にするか」や「場当たり的なアイデア」のみに終始してしまうと、それはただの自己満足で終わり、人々や社会から求められることもないでしょう。偶発的に市場を獲得することもあるかもしれませんが、その打率は限りなく低いといえます。

 

では、どうすればいいのか。ビジネスの最上段であり根幹に位置するものを、「WHY」と呼ぶことにします。

 

これから始めるビジネスは「社会に対して」どのような「存在意義」があり、「提供価値」を持ち、「実現目標(ビジョン)」を持つのか。これらWHYが明確になったとき、はじめてビジネスは社会と接点を持つことになり、市場機会が生まれます。

 

つまり、新規ビジネスを立ち上げる時点で、人々や社会がどのようなインサイト(潜在的な望みや課題など)を持っていて、それらに対して自分たちはどのような価値を提供できるのかをきちんと考え抜き、明らかにすることが、新規ビジネスを成功に導いてくれるのです。

 

これがビジネスの根幹をデザインするということです。

 

(出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)
[図表2]WHYが明確になったとき、はじめて市場機会が生まれる (出所:YRK and 事業変革のヒントが見つかる Re/BRANDING magazineコラム)

 

さらに明確化したWHYは、その後のビジネスの成長において、大きな3つの役割を果たし、ビジネスに持続可能性をもたらしてくれます。

 

WHYは……

 

⇒リーダーシップを発揮する
⇒差別優位性を生む
⇒指針・判断基準になる

 

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