終戦直後に激しいインフレが発生
「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は、防衛費の財源確保のための国債発行を否定しましたが、その根拠として、終戦後のインフレという「歴史の教訓」を挙げています。
歴史を振り返れば、戦前、多額の国債が発行され、終戦直後にインフレが生じ、その過程で国債を保有していた国民の資産が犠牲になったという重い事実があった。第二次大戦後に、安定的な税制の確立を目指し税制改正がなされるなど国民の理解を得て歳入増の努力が重ねられてきたのは、こうした歴史の教訓があったからだ。(国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議「報告書」)
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このように、終戦直後のインフレを根拠に、国債の発行を否定するという「歴史の教訓」は、しばしば、引き合いに出されてきたものです。
日本経済新聞も、有識者会議の提言を引用しつつ、こう書いています。
「安定した財源の確保」「幅広い税目による負担」を掲げて「国債発行が前提となることがあってはならない」とくぎを刺した。根っこにあるのは先の大戦での苦い経験だ。戦争初期に設けた「臨時軍事費特別会計」は、会計期間を区切らず国会の監視がないままに国債の発行を重ねた。結局、終戦までの8年あまり借金を膨らませ続けた。国の債務残高は終戦直前には国民総生産(GNP)比で200%を超えるまでに増大した。戦争による生産設備の破壊なども重なり、戦後にはハイパーインフレが生じる。国債は紙くず同然となり「国民の資産が犠牲になった」。今、政府債務残高は国内総生産(GDP)比で250%を突破し、終戦直前の水準を上回る。新型コロナウイルス禍の歳出膨張で短期国債の比率が高くなり、金利変動にもろくなっている。(『日本経済新聞』2022年12月2日)
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確かに、第二次世界大戦直後、日本は激しいインフレに襲われました。
この激しいインフレに対しては、当時、対策として、預金封鎖や新円切替、財産税などの強行措置、さらには1949年にGHQの経済顧問となったジョセフ・ドッジによる厳格な緊縮財政(いわゆる「ドッジ・ライン」)が行なわれました。