(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年あたりから物価が上がってインフレになっていますが、実は、これまで日本は先進資本主義諸国の中で唯一、20年以上もデフレの状態にありました。今インフレに振れているからといって、脱却できるかは未知数です。長期のデフレがどんな弊害をもたらしたか。評論家の中野剛志氏が新刊著書『どうする財源——貨幣論で読み解く税と財政の仕組み』(祥伝社新書)より、日本経済がおかれた過酷な状況を解説します。

デフレは、資本主義の死

貨幣の不足によって経済全体が貧しくなる不健全な経済状態とは、デフレ(デフレーション)のことです。

 

デフレとは、一般的には、一定期間にわたって、物価が持続的に下落する現象のことを言います。その反対に、物価が持続的に上昇する現象は、インフレ(インフレーション)と呼ばれます。

 

デフレは、どうして起きるのでしょうか。それは、経済全体の需要(消費と投資)が、供給に比べて少ない状態が続くからです。「需要不足/供給過剰」が、デフレを引き起こします。

 

デフレとは、需要が不足すること、つまりモノが売れない状態です。

 

モノが売れない状態が続けば、どうなるか。

 

企業は赤字が続き、最悪の場合は倒産してしまうでしょう。労働者は賃金が下がり、最悪の場合は失業してしまうでしょう。

 

企業は赤字が続いたり、倒産したりすれば、「投資」をしなくなります。労働者は賃金が下がったり、収入がなくなったりすれば、「消費」をしなくなります。

 

投資と消費とは「需要」です。デフレで企業が苦しくなり、労働者が貧しくなれば、需要はさらに縮小し、デフレは続きます。

 

このデフレの悪循環について、別の言い方をすると、次のようになります。

 

デフレとは、物価が継続的に下落することですから、裏を返すと、貨幣の価値が継続的に上昇するということです。

 

デフレとは、貨幣の価値が上がっていく現象なのです。

 

さて、貨幣の価値が上がっていくならば、人々は、モノよりもカネを欲しがるようになるでしょう。つまり、支出よりも貯蓄を選ぶということです。

 

また、大金持ちはともかく、普通の消費者は、住宅や自動車のような大型の消費をする場合には、ローンを組むでしょう。

 

企業もまた、大型の投資をするにあたっては、銀行から借入れをします。

 

しかし、デフレで貨幣価値が上がっていく中で、債務を負うと、どうなるでしょうか。貨幣価値が上がるということは、借金は、借りた時よりも返す時のほうが実質的に膨(ふく)らんでいるということになります。

 

このため、デフレになると、誰も銀行から融資を受けなくなります。その反対に、債務が膨らむのを恐れて、返済を急ぐようになります。

次ページデフレになると、経済はどうなるか

※本連載は中野剛志氏の著書『どうする財源——貨幣論で読み解く税と財政の仕組み』(祥伝社新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

どうする財源 貨幣論で読み解く税と財政の仕組み

どうする財源 貨幣論で読み解く税と財政の仕組み

中野 剛志

祥伝社

21世紀の経済原論 あらゆる経済政策には、財源の裏づけが必要である。政府は往々、財源として増税を実行する。では、私たち国民は、増税の根拠となる「財源」についてどれほど知っているだろうか。本書では、貨幣とは何かと…

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