世帯平均貯蓄2000万円…「お金持ちに“金融資産税”を課す」ことで日本経済に起こる変化 (※写真はイメージです/PIXTA)

西野卓郎氏の著書『ベーシックインカムから考える幸福のための安全保障』より一部を抜粋・再編集し、「個人金融資産税」について考えていきます。

個人金融資産の6割は「60歳以上の高齢者」が所有

2020年第3四半期の「資金循環統計(速報)」(日銀)によると、新型コロナウイルス流行前である2019年12月末の家計の金融資産残高は1893兆円で、そのうち「現金・預金」が、全体の半分以上を占めている。

 

個人金融資産の6割は60歳以上の高齢者が所有し、世帯平均貯蓄は2000万円を超えているといわれているので、これに課税することは、裕福な高齢者から、若い世代への所得移転という性格を持っている。

 

ただし、日銀金融広報中央委員会の調査によると、2人以上世帯の3割、一人暮らし世帯の5割が貯蓄ゼロであるから、住民税非課税世帯は金融資産税を減免してよいかもしれない。

 

波頭亮は、資産を現金や預金の形で持っていれば課税されないが、そのお金を土地に換えた途端に固定資産税を課されるというのは資産形態間の公平を欠くため、これからは土地だけでなく金融資産も資産課税の対象とすることが望ましいとしている。

 

土地に対する課税である固定資産税と同率の1.4%に設定すると、個人金融資産から徴収される税額は毎年約20兆円以上になる。

 

波頭は、土地のほうが資産としての有限性が高いという点を重く見て、金融資産課税の税率を1.0%と多少低く設定することもあり得るとしている(前掲書)。金融資産税を課税する場合には、税務当局が金融資産保有額を十分把握していることが重要である。

 

現在でも全国の国税局と税務署をネットワークで結ぶ国税総合管理システム(KSKシステム)を活用すれば、タンス預金や貴金属の売却金額を把握することはできる。しかし、キャッシュレス化が進み、すべての現金が口座を経るようになり、全面的な名寄せが可能になれば、資産の額を把握することが効率化できるだろう。

 

最低限、銀行口座の新規開設時には、マイナンバーとの紐付けを義務づけるべきである。

 

ところで、所得を安全資産である貨幣で手元に保有しようとする流動性選好は、貨幣が額面通りの価値あるものとして直ちに支払いができる(交換相手に受け取ってもらえる)という側面とともに、減価しない財であるから選好されるという側面もある。

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    著者紹介

    特別区長会調査研究機構 主任研究員 

    1960年兵庫県神戸市生まれ。1985年東京都庁入庁。

    水道局、企画審議室、都立大学事務局、大学管理本部、総務局に勤務。
    人事・労務、地方分権推進、水循環、緑化、留学生支援、大学改革、生涯学習、公衆衛生、ホームレス支援、防災、被災地支援、廃棄物、まちづくり等の分野に携わる。

    担当した主な報告書等
    「東京都地方分権検討委員会答申:東京の自治のさらなる発展をめざして」「とうきょうプラン’95生活都市東京をめざして:東京都総合3か年計画」。

    著者紹介

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    本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『ベーシックインカムから考える幸福のための安全保障』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

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