(※写真はイメージです/PIXTA)

松田文雄氏の著書『「心の育ち」と「自分らしさ」―子育てと自戒―』より一部を抜粋・再編集し、「叱るしつけ」について考えていきます。

「本当に叱らなければならない」2つのケースとは?

一方で、本当に叱らなければならないときは2つあると考えてください。これは、恩師の一人である篁一誠(たかむらいっせい)先生のおっしゃった言葉です。それに私の考えを加えてみました。

 

一つは、「命に関わるような危険な行動を取っている、あるいは取ろうとしているとき」です。

 

危ないところに登ったら「危ないから降りようね」と言ってみることが必要ですが、待てない場合、待つ時間的余裕がない場合には、「危ない! やめなさい!」とひとまず制止して、安全を第一に考えます。そして、安全な状態になってから、そのような危険な行動を取ろうとした理由について、丁寧に聞くことが必要です。

 

もう一つの叱るべき事柄は、親が「これだけはどうしてもしてほしくない」と思っている行動。

 

それを決めておくことに意味があります。人はそれぞれ価値観が異なるので、当然親によって内容は異なります。

 

たとえば、「人を傷つける言動だけはしてほしくない」と考える親もいれば、「やられたらやり返せ、弱虫になるな! 負けるな!」という親もいるでしょう。

 

両親や祖父母が異なったことや矛盾したことで叱ると一貫性がなくなり、しかも子どもは混乱します。子どもは叱るほうを「ウザイ」と考えがちですから、同じ言動が一方では叱られ、一方では容認されると、容認されるほうになびきます。

 

些細なこと(行儀、箸の持ち方、言葉遣い、身だしなみなど)にばかり囚われてこまごまと叱ると、どうしても止めたい肝心なときにやすやすと突破されてしまいます。

 

些細なことは叱るのではなく、「~しようね」と具体的にどうしたらよいのかを助言したり、教えたりするほうがよいと思われます。その場合、なぜそれではいけないのかについて具体的に丁寧に教えることで納得して回避する気持ちを育てます。そして、うまくできたら認めることを忘れてはいけません。

 

丁寧な対応は、落ち着いて聞くことができ、伝えたい内容が伝わりやすくなります。そして、丁寧に対応されることによって自分が大切な存在として扱われていると感じ、自己価値や自尊心の支えになります。

 

発達の特性(たとえば聴覚過敏)があってもなくても叱るときには、甲高い声は不快です。できるだけ落ち着いた声で穏やかにゆっくりと簡潔に要点を伝えましょう。

 

回りくどいと、子どもは何を言われているのか見失ってしまいます。また、わかりやすく伝えるつもりで比喩や例え話を使うと、かえってわけがわからなくなってしまうこともあります。

 

声の高さや大きさ(大声で怒鳴る)、怖い表情(しかめっ面)、怖い態度(殴る真似をする)などは、“怖さ”に直面するだけの体験となり、“してはいけない理由を理解する”ことにはなりません。

 

 

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松田 文雄

東海大学医学部医学科卒業後、国立精神神経センター診断研究部流動研究員などを経て、東海大学大学院医学研究科修了。

現在、医療法人翠星会松田病院理事長・院長。精神科・児童精神科医師。

医学博士。精神保健指定医。日本精神神経学会専門医。日本精神神経学会指導医。子どものこころ専門医。

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『「心の育ち」と「自分らしさ」―子育てと自戒―』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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