(※写真はイメージです/PIXTA)

人は「残り1点」とか「在庫わずか」という表示を目にすると、「今、買わないと売り切れてしまう!」といった焦る心理が生じるものです。コンサルタントの酒井とし夫氏が著書『もっと成果を出すための 売れる営業のルール』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

 

「数が少ない=価値がある」「今しか買えない=価値がある」と考えるのが人間心理ですが、これを「希少性の原理」と言います。

 

この原理を証明する実験を行ったのが、社会心理学者のステファン・ウォーチェルです。

 

彼は被験者を2つのグループに分け、片方には十分な量のクッキーを与え、もう片方には少し物足りない量のクッキーを与えました。

 

すると、少ない量のグループのほうが明らかにクッキーを高く評価したのです。

 

さきほどのネット通販をはじめ、テレビ通販やカタログ通販でのスタンダードな販促手法になっているのはご存知のとおりです。

 

「数量限定」「期間限定」「条件限定」の購買刺激策ですね。
「今日から3日間限定です」(期間限定)
「先着100名様限りのご提供です」(数量限定)
「小学生のお子様がいらっしゃる方限定の特別コースです」(条件限定)

 

「希少性の原理」は様々なマーケティング活動で利用されているポピュラーな販促テクニックなのです。

 

▶営業力を上げるコツ
提案は「希少性」を訴求する

説得力を上げる王道の公式「依頼+理由」

■「依頼・説得+理由」という公式を使えば、承諾率が上がる

 

お客様に依頼や説得を行う際には、その理由を添えて行うと効果的です。「依頼・説得+理由」というパターンで伝えると、人はその依頼・説得を受け入れやすくなるからです。

 

私が車の12カ月点検を受けたときのディーラーでの話をしましょう。

 

点検は1時間ほどで終わるとのことだったので店内で待っていると、担当者がやってきてこう言いました。

 

「バッテリーをチェックしましたが検査でこのような数値が出ているので、そろそろ交換をしたほうがいいと思います」

 

さて、この担当者の説明は心理学的説得の基本パターンなのですが、おわかりになりますか?

 

「そろそろ交換をしたほうがいいと思います」という依頼・説得とともに、「検査でこのような数値が出ている」という理由が添えられています。

 

依頼時に理由を添えると効果が上がることを証明する実験が心理学者のエレン・ランガーにより行われました。

 

被験者がコピー機の順番待ちの列の先頭の人に次の3通りの依頼の仕方をします。

 

①要求だけを伝える
「すみません、5枚なのですが、先にコピーをとらせてもらえませんか?」

 

②理由を添える
「すみません、5枚なのですが、急いでいるので先にコピーをとらせてもらえませんか?」

 

③理由にならない理由を添える
「すみません、5枚なのですが、コピーをとらなければいけないので先にコピーをとらせてもらえませんか?」

 

このときの承諾率は①60%、②94%、③93%でした。

 

この実験によれば、「依頼+その理由」とセットにすることが大事だということです。

 

ここで注目していただきたいのは、③の結果です。納得度の高そうな理由の②と数値結果がほぼ同じです。

 

つまり、依頼を行うときは何であれ理由を添えるようにするのがいいということです。理由の内容ではなく、とにかく理由があることが重要なのです。

 

「限定条件下の事実」を理由にして、

 

「こちらがお勧めしたい商品です。当社で人気ナンバーワンだからです」

 

と伝えるのもいいですし、お客様のクライテリア(価値基準)を理由にするなら、

 

「こちらがお勧めしたい商品です。□□と△△(お客様のクライテリア)に役立つからです」

 

というセールストークにすれば、「依頼・説得+理由」という公式が成り立ち、お客様の承諾を得られやすくなります。

 

▶営業力を上げるコツ
提案は納得度の高い理由を添える

 

酒井 とし夫
マーケティング・コンサルタント

 

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※本連載は酒井とし夫著『もっと成果を出すための 売れる営業のルール』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、再編集したものです。

もっと成果を出すための 売れる営業のルール

もっと成果を出すための 売れる営業のルール

酒井 とし夫

プレジデント社

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