臨床上有意な有効性は認められなかったが・・・
2010年ワンデル先生らはグルコサミン、コンドロイチンのひざおよび股関節の変形性関節症に対する効果をメタアナリシスで検討しました。この研究はBMJに掲載されましたが、GAITを含む10の研究、3803人の患者さんを検討した結果、グルコサミン、コンドロイチン、両者の併用群、全ての群で臨床上有意な効果を認めなかったとしています。
この研究の最大の問題は臨床研究として完全に失敗したGAITがこの研究の被験者の大部分を占めるということです。よく読めば疑問の残る論文ですが、NEJMやBMJといった一流医学雑誌に掲載された論文の結論は、その後の変形性膝関節症治療のガイドラインに影響を与えていきます。
クレッグ先生のグループは、GAITの最初の論文からさらに2年間の長期観察結果を報告しています。しかしながら、2年後も6カ月の時と同様にプラセボの効果が高く、グルコサミン、コンドロイチン、併用群、セレコキシブ全ての治療群と有意差がないという結果になってしまいました。
著者らはこの研究の結論として「グルコサミン、コンドロイチン、セレコキシブ等の治療はプラセボと比較して有意な有効性を認めなかったが、大きな副作用もなく安全である」としています。
つまりGAITは2年間の研究で、グルコサミン、コンドロイチンおよびセレコキシブの安全性のみを証明したにすぎません。同グループはGAIT2として各群での2年間の関節裂隙変化を計測しています。
その結果は、グルコサミン、コンドロイチン、併用群、セレコキシブ全ての群でプラセボと比べて有意な差を認めませんでした。しかし変形の軽度な群ではグルコサミンとセレコキシブが関節裂隙をプラセボに比べ保っていました。
データの信用性が高くなる「MRIを導入」した研究
同じような結果は他の薬を使った臨床研究でも報告されており、ひざ軟骨の保護を検討する研究では、比較的早期の軟骨が十分に残っている症例を被験者とするべきだと思います。また、ひざ立位でのレントゲン撮影では、患者さんのひざの角度やレントゲン撮影角度を厳密に同じにする必要があります。
これがうまくいかないと測定誤差が大きくなり、データの信用性が低下してしまうのです。そのため、最近ではMRIを使って軟骨量や変性を評価する研究が増えています。
クォー先生らはMRIによる軟骨、半月板変性評価 Whole–Organ MRI Score(WORMS)を使って201人の患者さんをグルコサミンとプラセボ群に分け評価しました。その結果 グルコサミンとプラセボ群で軟骨半月板変性に有意な差はありませんでした。
しかしこの研究は観察期間が6カ月であり、形態変化を見るWORMS評価には短すぎると言わざるを得ないでしょう。