ベテラン野球選手に学ぶ高齢期の働き方
「働けるうちはなるべく長く働こう」と主張すると、「働き口なんてそんな簡単には見つからない!」「死ぬまで働かせる気か!」さらには「公的年金の破綻をごまかす政府の陰謀だ!」といった批判を浴びます。また、働きたくても事情があって働けない方や、働くこと自体に苦痛を感じる方もいるので、正面きって主張しづらい面もあります。
しかし、これらの批判は、「高齢期も現役期(40~50代)と同じ働き方をしなければならない」との思い込みや誤解が背景にあります。就労延長といっても、現役期と同じような働き方を高齢期もする必要はありませんし、そもそも出来ません。
これは、プロ野球の世界もまた同様です。往年の名選手たちをみても、最晩年までキャリアハイの成績を残した選手は皆無で、やはり加齢とともに成績が落ち込む傾向にあります。そのため、ベテランの野球選手を起用する際は、(1)フルタイムからパートタイムへの変更(試合の後半で途中交代、間隔を空けながら出場etc)、(2)職務・役割の縮小(先発からリリーフへの転向、守備位置の変更(コンバート)、指名打者、代打の切り札etc)、(3)兼業・副業(コーチを兼任)などの方策がとられますが、これは、高齢者の働き方にも通じるものがあります。
先発投手(就労延長)が登板しないとなると、そのしわ寄せは中継ぎ陣(私的年金等)と抑え(公的年金)に及びます。就労延長の本質は、「死ぬまで働く」ことではなく、「少しだけ現役期間を延長する」ことですし、高齢期は現役期と同じような働き方をする必要はなく、個々人がそれぞれ自分のペースで働けばよいのです。
谷内 陽一
第一生命保険株式会社・第一生命経済研究所
主席研究員