高齢期も働ける環境が整備されつつある
◆高齢者は昔よりも若返っている!?
日本で2016年に翻訳・刊行された『ライフ・シフト(LIFE SHIFT)』(リンダ・グラットンほか著)は、最新の医学研究等を踏まえ、人類が健康に長く生きる時代に突入したことを説いて大きな反響を呼びました。
また、2017年1月には、日本老年学会および日本老年医学会が、高齢者の定義を75歳以上にすべきと合同で提言しました。(正確には、「65〜74歳:准高齢者」、「75〜89歳:高齢者」、「90歳以上:超高齢者」)。
両学会は、高齢者の定義を再検討するワーキンググループを合同で立ち上げ、高齢者の定義についてさまざまなデータに基づき分析した結果、現在の高齢者は10〜20年前と比較して5〜10年ほど若返っており、特に65歳から74歳の層は、心身の健康が保たれており活発な社会活動が可能な人が大多数を占めていると発表しました。
確かに、テレビに出演している往年の俳優・タレントの年齢が画面に表示されると、「えっ、もうそんな年齢なの!? 全然若いじゃない!」と驚くことが最近は増えました。
芸能人に限らず、周囲を見渡しても、加齢を感じさせない容姿や行動力を兼ね備えた60代・70代の方が増えています。
いずれにせよ、「65歳はお年寄り」という固定観念からそろそろ脱却する必要がありそうです。
◆年齢にかかわらず働ける環境が整備されつつある
わが国では現在、高齢者が年齢にかかわらず意欲と能力に応じて働ける環境が順次整備されつつあります。
高年齢者雇用安定法の改正により、2013年4月からは、65歳までの高年齢者雇用確保措置として、(1)65歳までの定年の引上げ、(2)65歳までの継続雇用制度の導入、(3)定年の廃止、のいずれかの措置を講じることが義務づけられました。
また、同法はさらに改正され、2021年4月からは、70歳までの高年齢者就業確保措置として、(1)70歳までの定年引上げ、(2)70歳までの継続雇用制度の導入(他の事業主によるものを含む)、(3)定年制の廃止、(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、(5)70歳まで継続的に社会貢献事業等に従事できる制度の導入、のいずれかの措置を講じることが努力義務とされています。
◆働く高齢者は実際に増えている
そして、60歳以降も働く高齢者は実際に増加しています。2021年時点の高齢者の就業率は、60〜64歳で71.5%、65〜69歳で50.3%、70歳〜74歳で32.6%となっており、60代前半の7割以上、60代後半の過半数、70代前半の3割以上が何らかの形で働いている計算になります([図表1])。