最期を迎えたい場所は自宅が6割、介護施設は3割
最期を迎える場所は大きく分けて、病院、介護施設、自宅です。特徴を簡単に説明すると次のようになります。
【病院】
医師や看護師が常駐しているため、いざというときにすぐ対応してもらえる安心感があります。しかし、延命のために無駄な治療を施される可能性が高いというデメリットもあります。
延命治療を拒否するリビング・ウイルを書いていても、家族や医師としっかり共有されていないと、自分が望む死に方をかなえることはかなり難しいと言っていいでしょう。
また、介護施設のように生活を重視する環境ではないため、面会の人数や時間に制限があって、終末期に家族と満足に会えない可能性もあります。特にコロナ禍が続く現在はそうです。
【介護施設】
看取り介護に対応している施設であれば、そこで最期を迎えられます。看取りというのは、治療による延命をせず、残された時間を充実させるために苦痛や不快感を緩和させつつ、最期の瞬間まで世話をすることです。
最近は、公的な特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)をはじめとして、民間の介護付き有料老人ホームや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでも看取りをしてくれるところはめずらしくありません。
介護施設の看取りは、介護スタッフのケアによって支えられています。終末期において、それなりに住み慣れた施設で顔なじみのスタッフに介抱してもらえるという安心感があります。
一方、ほとんどの施設では医師や看護師などの勤務は限定的であるため、夜間や緊急時に迅速な医療対応を受けることが難しいのがデメリットと言えます。
施設のなかには、いよいよ最期だというときに病院へ送る施設もあるので、確認が必要です。
【自宅】
住み慣れた環境で自由に過ごせて、最期を迎える瞬間は家族に看取ってもらえます。家族はもちろん、医師や看護師などの医療スタッフや介護スタッフ、ケアマネジャー(介護支援専門員)などの協力と連携が不可欠です。
看取りをしてくれる訪問看護も増えてきているので、おひとりさまでも在宅死は可能です。ただし、在宅看取りを希望している場合でも何かあった場合に救急車を呼べば、ほぼ100%、病院での延命治療に移行します。
2017年度の厚生労働省の調査では、約8割が人生の最期を「自宅」で迎えたいと答えています。厚労省よりサンプル数は少ないものの、貴重な資料として参考になるのが、日本財団が2020年に行った「人生の最期の迎え方に関する全国調査」です。
67~81歳の対象者に調査を行ったところ、死期が迫っているとわかったときに人生の最期を迎えたい場所として、58.8%が「自宅」、次いで33.9%が病院などの「医療施設」と答えています。自宅を選んだ理由の多くは、「自分らしくいられる」「住み慣れている」からでした。
一方、避けたい場所として42.1%が「子の家」を挙げているのが興味深い。人生の最期をどこで迎えたいかを考える際に重視するのは95.1%が「家族等の負担にならないこと」だそうですが、子ども世代の35~59歳の男女は、85.7%が「(親が)家族等との十分な時間を過ごせること」と回答。親子の考えにギャップがあることがわかりました。
人生の最期を「自宅」で迎えたいと答える人が多い一方で、実際には約8割の人が病院で亡くなっています。このことは、できるなら自宅で死にたいけれど現実問題としては難しい、という事実を表していると言えるでしょう。