ぽっちゃり小太りが一番長生きする
もう一つ、健康診断を受けると必ずチェックされるのが肥満度です。手っ取り早く判別する基準として、健康診断で、男性はウエスト85㎝以上、女性は90㎝以上で、かつ脂質や血圧、血糖値などの数値が基準値からはずれると、メタボ予備軍と呼ばれます。適正体重の指標はBMIという数値です。これは体重(㎏)を身長(m)×身長(m)で割ったものです。適正体重のBMI値は22とされていますが、現実には、多くの調査・研究でBMIが25を超えた人が一番長生きできるという結果が出ています。
日本でも厚労省の補助金を受けて行われた研究の結果、40歳の時点で平均余命がもっとも長かったのは、BMIが25~30未満の「太り気味」の人で、男性が41.6年、女性が48.1年でした。たとえば、身長170㎝の人なら、72~86㎏ぐらいの人がもっとも長生きするということです。
対に、もっとも短命だったのはBMIが18.5未満の「やせ型」といわれるグループです。「やせ型」の人の平均余命は、男性34.5年、女性41.8年で、「太り気味」のほうが男性で7年、女性で6年も長生きすることが示されたのです。実はこの前、認定医資格を保持するために内科学会の講習会に出たら、肥満がいかにいけないかについて講義をされたのですが、肥満の定義はBMI25以上だという。BMI25~30未満の人が一番長生きしているというのに。
しかし、内科の医者たちはそういう講習を受けないと、認定医を続けられないことになっているわけです。認定医になるために勉強する人のほうが、患者を早死にさせるような治療法を学んでいる可能性が高いのです。
もともとメタボ予防のためにダイエットするという考えは、1日平均3000キロカロリー以上もとっている欧米を基準としたもので、そのまま日本にあてはめるのは土台無理な話なのです。
重度の糖尿病などで、治療のためにどうしてもダイエットが必要な人は別として、ほとんどの高齢者は「食べすぎ」よりも「食べなさすぎ」のほうが危ないというのが私の見解です。
若い頃にくらべて体重が激増してしまいどうも体調が思わしくないという自覚症状があるのなら、医者のすすめに従ってダイエットをしたり運動したりするのもいいでしょう。しかし、高齢者は安易に体重を落としてはいけません。
年を取ってからのダイエットは代謝を悪くし、老化を進行させます。体重を減らすために炭水化物、タンパク質、脂肪などを制限すれば性ホルモンや細胞膜の材料となるコレステロールが不足して体がしぼみ、脂肪があまりに不足すると、肌も弾力を失って老け込みます。
ぽっちゃりおじいさん、ぽっちゃりおばあさん大いに結構。痩せすぎよりはぽっちゃりさんをおすすめします。
若い頃は、多少栄養が足りなくても体力でなんとか乗り切れますが、年を取って栄養不足になってしまうと、筋肉量が減って活力が低下するフレイルになるなど、寝たきりのリスクが高くなってしまうのです。