アパート経営で発生した「不動産所得」の申告方法
アパ-ト経営で発生した所得は「不動産所得」となり、所得税の確定申告が必要です。不動産所得は、次の計算式により求めることができます。
「不動産収入」は、所有するアパートの家賃収入や駐車料のほか、礼金や更新料等も含まれます。「必要経費」とは、不動産収入を得るために要した費用を指します。主に建物等の減価償却費や固定資産税、保険料、修繕費、租税公課、支払利息などがこれにあたります。所得税の確定申告は、1月から12月までの分を翌年2月16日から3月15日までに申告しなければなりません。
「青色申告」をする5つのメリット
所得税の申告において、「事業所得」、「不動産所得」、「山林所得」は青色申告にて申告することができるため、アパート経営による不動産所得は青色申告することができます。税理士としては、青色申告は税務上特典が多いため青色申告で申告することをおすすめします。青色申告の主なメリットは、次のとおりです。
1.特別控除が最大65万円受けられる
青色申告をすると、「青色申告特別控除」が最大65万円受けられます。これは不動産収入から必要経費を差引いた「不動産所得」から、さらに特別控除額を差し引くことができるので、その分節税することが可能です。
青色申告特別控除額は10万円、55万円、65万円と3種類あり、記帳方法や申告方法により異なります。55万円、65万円控除を受ける場合は複式簿記により記帳し、「損益計算書」のほか「貸借対照表」を添付する必要があります。
2.不動産所得が赤字になった場合、3年間繰り越すことができる
たとえば白色申告の場合、赤字が出た際その損失は切り捨てとなりますが、青色申告で申告している場合には、その損失を翌年以降3年間繰越できます。
アパート経営では、大きな修繕をした年など、赤字で終えることもあるでしょう。青色申告をしていると、その赤字が1,000万円であれば、翌年の黒字が1,200万円の場合、前年の赤字1,000万円を差し引いた200万円が所得として課税されますので、その節税メリットは大きなものとなります。
また、赤字を繰り越す方法のほか、前年も青色申告により納税している場合には、その損失額を前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受けることも選択できます。
3.家族への給与を経費にできる
親族に払う給与は原則として経費にすることはできませんが、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、届け出た給与額が適正額である場合、必要経費とすることができます。ただし、その際は以下の条件を満たしている必要があります。
ⅱ)その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
ⅲ)その年を通じて6ヵ月を超える期間、その青色申告者の営む事業にもっぱら従事していること
4.「貸倒引当金」を経費にできる
青色申告をすると、売掛金の貸倒れに備え、貸金の帳簿価額に対し5.5%乗じた金額(形式基準)を「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」として必要経費とすることができます。
5.30万円未満の資産を取得した場合、その年の経費として計上できる
業務のため購入した建物・車両運搬具・備品等の資産で、取得価額が30万円未満であれば、その年の必要経費とすることができます。ただし10万円以上の場合、減価償却資産として、その耐用年数に応じ、数年にわたり経費として計上することが原則となります。
青色申告をしていると、30万円未満の少額減価償却資産に関しては、購入・使用した年度に一括して必要経費とすることが可能です。黒字が大きくなりそうな年は、年内に30万円未満の資産購入を検討してみてはいかがでしょうか。ただし、年間300万円が限度額であるという点には注意しましょう。