余命宣告された62歳男性…残された58歳妻、「年金繰り上げ」の有無で「寡婦年金額」に生まれた“衝撃の差”【社労士が解説】

余命宣告された62歳男性…残された58歳妻、「年金繰り上げ」の有無で「寡婦年金額」に生まれた“衝撃の差”【社労士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「遺族年金」というものを、本当に知っていますか? 遺族年金は非常に便利な制度ですが、認識を誤れば、支給されなくなってしまう可能性が大いにあります。遺族年金を受けられる条件について、特定社会保険労務士・社会福祉士の脇美由紀氏の著書『夫が、妻が、自分が、親が「まさかのときに備える」 知っておきたい 遺族年金』(ビジネス教育出版社)の中から一部を抜粋して紹介します。今回は、「寡婦年金」について。

寡婦年金の妻の要件とは?

寡婦年金を受けるには、亡くなった夫だけでなく、妻にも要件があることをご存じですか?

 

寡婦年金の妻の要件

寡婦年金は妻にも要件があります。要件は四つあり、そのすべてを満たす必要があります。

 

①夫によって生計を維持されていたこと

ひとつ目の要件は、夫によって生計を維持されていたことです。同じ屋根の下に住んでいて、住民票上の同一世帯であり、遺族の収入が基準内であれば問題ありません。別々に暮らしているときなどは生計同一関係にあったことの証明が必要になります。亡くなった夫との生計維持の認定基準は、遺族基礎年金や遺族厚生年金と同様です。

 

②婚姻関係が継続して10年以上あること

二つ目の要件は、夫との婚姻関係が10年以上継続していることです。遺族基礎年金や遺族厚生年金では、亡くなった時点で婚姻関係にあればよいとされていますが、寡婦年金は婚姻関係が「継続」していることが要件となっています。事実上の婚姻関係も含みます。

 

③65歳未満の妻であること

三つ目の要件は、65歳未満の妻であることです。寡婦年金は、妻が60歳から65歳になるまでの間に支給される年金なので、65歳以上であれば要件を満たしません。夫が亡くなったときに60歳未満であっても要件を満たします。そのときは、60歳になるまで支給が停止されます 。

 

④老齢基礎年金を繰り上げて受けていないこと

四つ目の要件は、老齢基礎年金を繰り上げて受けていないことです。老齢基礎年金は65歳から支給される年金ですが、60歳を過ぎれば繰り上げて早く受けることができます。この年金を妻が受けているときは、寡婦年金を受けることはできません。

 

 

 〈「繰上げ支給の老齢基礎年金」とは〉

 

老齢基礎年金は65歳から支給される年金ですが、60歳から65歳になるまでの間に、
前倒しをして受けることができます。これを「繰上げ支給の老齢基礎年金」といいま
す。一定割合で減額された年金を受けることになりますが、早目に年金を受けられるという利点もあり利用している人がいます。

 

〈このようなことがありました〉

 

「せっかく納めてきた年金保険料をムダにしたくない」

 

「だから繰上げして、今から老齢基礎年金を受け取りたい」

 

余命僅かと宣告された62歳の男性の言葉です。国民年金を40年間まじめに納付してきた彼には58歳の妻がいました。老齢基礎年金を繰り上げて受けたとすると、今から1年当たり約67万円を受けることができますが、亡くなったときに妻に寡婦年金は支給されません。一方、繰り上げて受給していなければ、妻には5年間で約290万円の寡婦年金が支給される可能性があります。

 

寡婦年金のしくみを説明したところ、「自営業者に遺族年金はないと思っていた」「妻が年金を受け取れるのであれば」と老齢基礎年金の繰上げはやめておくことになりました。人によって判断は違うでしょうし、何が正解かもわかりません。ただ、制度を知っておくことで、後悔のない選択が可能になるかもしれません。

夫が、妻が、自分が、親が「まさかのときに備える」 知っておきたい 遺族年金

夫が、妻が、自分が、親が「まさかのときに備える」 知っておきたい 遺族年金

脇 美由紀

ビジネス教育出版社

「遺族年金はもらえるのが当たり前」ではない! 遺族年金は、しっかり準備しないと、本来の金額より少ない額しか受けられなかったりすることがあります。あらかじめ遺族年金制度を知っていれば、後悔しない違った結果になっ…

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