写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、直近のフィリピンの製造業の動向についてレポートします。

フィリピンの製造業PMI、顕著な回復を示すが…

2月のフィリピン製造業の活動は、高コストとサプライチェーンの課題が重くのしかかったため、成長ペースが鈍化しました。

 

2月のS&Pグローバル・フィリピン製造業購買担当者指数(PMI)は52.7で、1月の53.5から低下しています。これは、2022年11月の数値と一致し、2022年10月の52.6以来の低い数値となりました。PMIの数値が50を超えるのは、13ヵ月連続です。

 

PMIは50を超えると生産活動の改善を示し、50未満の場合は、劣化を示します。PMIは、新規注文(30%)、生産高(25%)、雇用(20%)、サプライヤーの納期(15%)、購入在庫(10%)の5つの指標の加重平均によって製造状況を測定する指標です。フィリピンのPMI値は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟6ヵ国の中で、タイ(54.8)に次いで2番目に大きな数値でした。これは、インドネシアとベトナム(ともに51.2)とミャンマー(51.1)を上回っています。マレーシアは50を下回り、48.4でした。

 

フィリピンでの生産と新規受注は、顧客からの需要の増加と顧客数の増加により、2月に増加しましたが、そのペースは鈍化しました。また企業の購買活動は6ヵ月連続で増加し、在庫は18ヵ月連続で増加しました。生産高の増加は、企業が購買活動を活発にしたことを意味するとともに、フィリピン企業は、今後数ヵ月での売上高の増加を見越して、在庫を維持することに努めているようです。

 

一方で、フィリピンの製造業にとって、高コスト、雇用の減少、厳しいサプライチェーンの状況など、いくつかの懸念事項が存在します。

 

供給業者からの価格上昇はコスト負担に直接つながり、インフレが急速に上昇している要因となっています。そして、季節要因調整済みの雇用指数は、2ヵ月連続で下落しました。企業によっては、積極的に人員を解雇している動きがみられますが、全体的には、人員削減のペースはわずかです。

 

サプライチェーンの問題も2月にセクターに重くのしかかりました。原材料不足、港湾の混雑、厳しい輸送条件により、平均リードタイムが長くなったため、サプライヤーのパフォーマンスは悪化しました。

 

以上のような課題はあるものの、S&Pグローバルは、フィリピンの製造業の今年の見通しを前向きで維持しています。回答者の半数は、今後12ヵ月で生産量が増加すると予想していますが、競争状態と投入コストの上昇に関する懸念が浸透してきたため、1月からセンチメントは弱まってきていると指摘しています。

 

一方で、継続的なサプライチェーンの課題と不確実な国際情勢にもかかわらず、フィリピンの製造業は回復力を維持しており、国内需要から大きな恩恵を受けているとしています。

 

今後、PMIは、中国の経済再開による後押しを受けて、緩やかな拡大を続けると予想する向きが多いですが、コスト圧力が、製造業の成長見通しを鈍らせる可能性がありそうです。

 

※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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