「同性婚合法化」のきっかけは「映画の力」だった!『ブロークバック・マウンテン』が人々に突きつけた「切実な問い」とは

「同性婚合法化」のきっかけは「映画の力」だった!『ブロークバック・マウンテン』が人々に突きつけた「切実な問い」とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカでは「同性婚」について、2015年に連邦最高裁判決で「基本的人権」として認められ、2022年に連邦レベルで法制化されました。実は、同性婚を許容する土壌は2000年代から醸成されてきており、その背景には「ある映画の力」がありました。NHKエンタープライズ エグゼクティブプロデューサーの丸山俊一氏が著書『アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望』(祥伝社)より解説します。

政治的に重要な映画『ブロークバック・マウンテン』―ジョセフ・ヒースの証言

まず、『ブロークバック・マウンテン』がなぜ政治的に重要な映画なのか、ということから始めましょう。

 

この映画が公開された当時、アメリカの同性婚に関する議論は保守派の反対意見が優勢になると考えられていました。

 

その理由は、アメリカの国民がいまだに非常に宗教的だからです。1990年代まで、80〜90%のアメリカ人が同性愛は罪であり、不道徳であると考えていたのです。

 

しかし、私たちが知っているように、その後多くの人が同性愛に対して寛容な態度を取るようになり、法律的にも同性婚が認められるようになりました。

 

そこには、『ブロークバック・マウンテン』をはじめとする映画の力があります。ハリウッドを乗っ取ったリベラルが、巨大な権力を手にしたのです。

 

この映画は、力強く感動的であり、ヒットして多くの観客が見ました。実際に多くの異性愛者(若者だけでなく年配者も)が、同性愛を許容しようと寛容な態度を取るきっかけとなりました。

 

実は、『ブロークバック・マウンテン』はゲイのコミュニティではそれほど人気がありませんでした。監督のアン・リーが異性愛者であり、この映画の表現においては多くの面で異性愛者の感性が反映されていると感じます。

 

ただ、だからこそ平均的なアメリカ郊外の人々にアピールする力を持っていたのだとも言えます。

 

映画では、同性愛に対する社会の不寛容が2人の男の人生をいかに破壊したかが描かれます。2人は出会い恋に落ちますが、その素晴らしい愛は社会から受け入れられません。

 

時代遅れの社会的な慣習が2人の人生だけでなく、妻子など彼らに関係する人たちの人生を台無しにしてしまいます。

 

それならば、古い社会通念を変えるべきだ―そう主張する映画でした。その主張は、異性愛者のアメリカ人の心にも強く響くものでした。それはリベラルな価値観のプロパガンダと言っても過言ではありません。

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アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

アメリカ 流転の1950ー2010s 映画から読む超大国の欲望

丸山 俊一

祥伝社

欲望の正体を求めて。想像力の旅が始まる。 NHK「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」アメリカ編を 完全書籍化 番組では放送されなかったインタビューも収録 理想、喪失、そして分断 アメリカはどこへ行こうとしているの…

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