揉める要因のひとつである「距離感の遠さ」
◆3. きょうだいとはいえ、大人になると距離感が変わってしまうこと
これもよくある事例です。そもそも仲が悪いきょうだいは、年を重ねると顔を合わせることも少なくなり、親の死に目や相続の相談で久々に連絡を取ったというごきょうだいも一定数いるようです。
そして、距離感の遠さというのは揉める要因の一つではないかと感じます。
中には、そもそも、きょうだいがどこに住んでいるかわからず、連絡を取る方法がなくて、弁護士が相続人の調査を開始するようなこともあるほどです。
さらに、親の再婚が絡むケースは相続が問題化する例が多いです。義理の兄弟姉妹というのは、センシティブな関係性ですので、お互いにあまり連絡を取らないことが多いでしょう。
親から見ればどちらも子どもになりますが、「前配偶者の子と後配偶者の子」の義理の兄弟姉妹では揉めるケースが相当数見られます。
共有状態の不動産は売却できない?
不動産を分けられないなら、「共有状態」で持っておいて、不動産の賃料収入のように分けられる金銭にして分ければいいんじゃないの? という考えも浮かぶかもしれませんね。ただ、賃貸経営をされたことのある方は、共有状態での不動産運営は非常に困難な現実があることをご存知でしょう。
賃貸経営というのは、「不労収入」などと言われがちですが、意外とオーナー側でも判断すべき事柄があります。特に、相続時に承継するような老朽化不動産ならなおさらです。賃貸管理会社を入れて運営するにしても、
・賃貸人の変更時の契約、退去時・入居時等の清掃、修繕の判断
・老朽化が進めば大規模な修繕および建替え計画の検討
をしなければなりません。アパート経営というのは、あくまで人任せにしてよいものではなく、かつ、時間軸が長いビジネス・事業です。
そうすると、このような判断や契約を行う場合に、共有状態ですと、共有者の署名とハンコが毎回必要になってきます。
また、判断が分かれると、そのすり合わせも必要になります。実際に入退居の判断や手続は即座に行っていかないとせっかくの入居希望者もよその物件にいってしまうかもしれません。
大規模修繕などは、新規に建替えなのか、修繕なのか、その手配は誰がやるのか、仮に借入れを起こすとしたら、そのリスクは誰が負うのか、などなど、まあ簡単に意見がまとまることはないでしょう。
このように、共有の状態では意見がまとまらず、単純に賃貸経営を進めていくこともままならないのが現実だと思います。また、仮に誰かが代表して管理運営していたとしても、その賃料の分配が不公平だとか、無駄な経費を使っているとか、とにかく揉めがちです。