(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資は、収益を上げられる可能性がある一方で、トラブルが発生するリスクもあります。たとえば、相続対策と残された家族のためを思ってアパートを建てたら、泥沼の相続争いを招くこともあります。本記事では、不動産取引に関する法律実務に精通し、自身も不動産投資家である弁護士・山村暢彦氏が、著書『失敗しない不動産投資の法律知識』(中央経済社)より、相続を見据えた不動産投資のリスクについて解説します。

きょうだい、親子で相続争いがなくならない理由

もちろん法律で決まった相続分よりも低くてもよいという方が多ければ、それで調整することは可能です。ただ、数百万円、数千万円のお金が絡むと、なかなか、「譲って終わり」ということにはなりづらいのが、現実です。

 

「一つ屋根の下で育ったきょうだいや親子の間で、相続財産を巡って争うなんて考えられない!」という方も多いと思います。ただ、現実には、

 

1. 高額な金銭が絡むこと
2. そのトラブル解決に時間がかけられること
3. きょうだいとはいえ、大人になると距離感も変わってしまうこと

 

などから、相続問題はトラブルに発展することが多いのかなと感じています。

 

以下、1. 〜3. について、詳しくご説明しましょう。

 

◆1. 高額な金銭が絡むこと

不動産が絡む相続は、高額な相続財産の分配になりがちです。仮に東京近郊で相続が発生し、収益マンションあるいはアパート、実家の土地建物などが絡むと、相続財産は数億円になることもざらにあります。

 

仮に古いアパートが一つと、古い実家の土地建物、親の老後の生活費の貯蓄等が一部残ったという状況でも、相続財産が数千万円になることもあり、その場合、一人あたりの相続分も、数千万円程度になることも多くあります。

 

日本人の平均年収は、統計的、割合的には年収1,000万円に満たない方が大多数です。そうすると、相続財産の分配の結果によっては、数年分もしくはそれ以上の年収に匹敵する金銭が得られる可能性があります。

 

きょうだいとはいえ、成人すると独立した家計を営むことになり、配偶者や子どもなどがいる状況になると、かつては一つ屋根の下で育ったとはいえ、今後の自分たちの老後資金、子どものための学費、生活費などを考えざるを得ません。

 

そうすると、「法律で決まった相続分」を放棄するとか譲るという判断はなかなかできないのが実情ではないかと思われます。

 

◆2. トラブル解決に時間がかけられること

「相続財産なんて、親から譲り受けた、いわば棚ぼたの財産なのに、どうして揉めるんですかね?」不動産相続による争いを専門としていない同期の弁護士仲間からは、よくそう言われます。

 

これに対して、相続トラブルは、棚ぼたの財産に関する事柄だからこそ、揉める、争う時間が取れるのではないかと私は考えています(不動産・相続案件の取扱いの多い弁護士ならではの独特な考え方かもしれませんが)。

 

たとえば、不動産取引や収益アパートの建築トラブルの場合は、売買契約や賃貸事業の当初の計画を進めていかなければならないので、その途中で揉めている時間がありません。

 

一方、相続財産は、現実の家計から切り離された棚ぼたの資産、凍結している資産で、そもそも家計や事業などではあてにしていない資産ですから、その財産の取得が後になっても急ぐことが少ないという特徴があります。

 

そのため、数年程度時間がかかったとしても「法律どおり」の相続財産を取得したい、という気持ちが生じ、争いが起きる(具体的にいうと裁判手続を行う)ことが多いように感じます。

次ページ揉める要因のひとつである「距離感の遠さ」

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失敗しない不動産投資の法律知識

失敗しない不動産投資の法律知識

山村 暢彦

中央経済社

不動産投資を始めようとしている方、不動産投資の経験のある方、次世代に賃貸不動産を遺したい方。人に貸すための不動産購入で失敗しないための法律知識がわかる本。

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