楽観主義者は「厳しい状況」に耐えられない
世界の優良企業の成功の秘訣を説いた名著と言われる『ビジョナリー・カンパニー2飛躍の法則』に興味深い話が載っていました。ベトナム戦争で8年間の捕虜生活で20回以上もの拷問を受けて奇跡的に生還した米国の軍人、ジム・ストックデール将軍の話です。同書では「ストックデールの逆説」として紹介されています。
いつ釈放されるのかが全くわからない状況にあって、「どんな困難であれ最後には勝つという確信を失ってはならない。それと同時に、自分の置かれている状況で最も厳しい現実を直視しなければならない」との強い意志により、将軍は母国に帰還することができました。
この本の著者がストックデール将軍に「厳しい状況に耐えられないのはどういう人ですか?」と訊いたところ、「楽観主義者だ。クリスマスまでには出られる。それが叶わず、次に復活祭にはどうにかなるとするもそれも果たせず、次の感謝祭には、と楽観的に考えた末に失望が重なり死んでいく」と将軍は答えました。
『ビジョナリー・カンパニー2』は経営書ですので、このエピソードは良い企業が偉大な企業に成長するための法則として紹介されています。
これは企業経営にかかわらず、成長の法則として言えることだと思います。「どんな困難にぶつかっても現実を見つめて最後には必ず勝つ」という強い意志が逆境を跳ね返し、飛躍するというのはゴルフの世界でも共通するものです。
ストックデール将軍は厳しい現実を直視し、その現実から逃げなかったから最後にはアメリカに帰ることができました。楽観主義とかプラス思考というのは現実から目をそらしがちです。現実を見たくない、つらいから見ることができない。そういう人は惨めな自分を認めたがらない。問題を問題として認識しないようにしているのです。
もちろん現実を直視できるなら、プラス思考は悪いことではありません。タイガーは現実を直視できたこと、そのうえで自分を変えることができたことで一流プレーヤーとして成長していくことができたのだと思います。
吉田 洋一郎
ゴルフスイングコンサルタント