「最低ランクの高校」を変えた4つのモットーとは?
アメリカの学校を舞台にした『落ちこぼれの天使たち』という映画があります。無気力 勉強のできない生徒たちが、熱血教師の出現により全員全米トップレベルまで成績を上げるという、少々できすぎたような学園ドラマです。
しかし、じつはこの映画はノンフィクションなのです。ロサンゼルスの生活貧困地区にある、落ちこぼれの生徒が集まった最低ランクの高校に、エスカランテ先生という数学の教師が赴任してきました。生徒たちはやる気もなく、授業を聞く気もなく、教師を馬鹿にした態度をとります。
どの教師たちも「全力を尽くしている」と言いつつ、生徒たちの学力は小学生レベルだとして、成績を上げることを諦めていました。しかし、エスカランテ先生は「大切なのはやる気だ」と宣言し、リンゴを2つに割って2分の1を説明するところから始め、微分積分、そしてさらに難しい大学レベルの数学を生徒たちに教えたのです。
エスカランテ先生は他の教師のように、「果たして理解できるだろうか」と生徒たちの可能性を疑ってかかるのではなく、最初から「どうやって教えたらいいか」「どうすれば理解しやすいか」を考えました。可能性を高められることはもはや当然、というメンタルセットをもっていたのです。
彼が大切にしたモットーは、
①生徒たちを愛し、気にかける
②可能性や能力を認め、良いところは正当に評価する
③強制しない、選択を与える
④楽しみの中で一緒に学ぶ
というものでした。
すると、生徒たちも徐々に彼を-信頼するようになり、心を開いて一緒に頑張るようになりました。その結果、生徒たちの数学の成績は全米トップレベルまで上がったのです。さらには「大学単位認定テスト」の合格者数が、全米の公立学校の中で数々のエリート校に交ざり、なんと第4位に輝くという功績も残しました。
このテストは、アメリカの高校卒業生のたった4%しか合格できず、急に合格者が増えたために学校は調査を受けたほどだそうです。
子どもの可能性を信じるのは親の役割
エスカランテ先生は、「絶対に諦めてはいけない。大切なのは自分を信じること。信じることができれば、あとは簡単なこと」という信念を生徒たちに教えました。
そして、生徒たちは大学に行くことで、医師や弁護士などの資格を得て貧困層から抜け出し、自分たちの人生をまったく違うものにつくり変えることができました。この話は、日本より格差がかなり大きいアメリカの中でさえ、最低ランクの学カの生徒でも、努カによって最高ランクまで成績を上げることができる、という事実を証明しています。
逆に、エスカランテ先生のような人がもしいなかったら、潜在能カを認めてもらえないせいで可能性を潰してしまう生徒がたくさんいた、とも言えます。実際、この学校の話聞いた私は、自分が「東大に行く」と言ったとき、先生たちに「無理だ」と反対されたことを思い出しました。先生は、たくさんの受験生を見てきたという点では受験の経験値が上ですから、彼らに自分の能力を見限られ、否定されるのは非常にショックなことです。
私は「自分は自分」と割り切れましたが、可能性を否定されて自信をなくし、希望とは異なる大学に変更した生徒もいるでしょう。
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」で有名なプロボクサーのモハメド・アリの言葉に、「不可能とは誰かに決めつけられることではない」というものがあります。これは、不可能とは単なる先入観であって、失敗を恐れて難しいことに挑戦しない人が現状に甘んじるための言い訳として使う言葉であることを意味しています。
もし勉強やスポーツなどに行き詰まっている子どもがいたら、人聞は成長するもので、今もっている能力は伸ばせるのだというメンタルセットへ導いてあげれば、将来の可能性ははるかに広がっていくのではないでしょうか。
せめて親だけでも、エスカランテ先生が大切にしていた4つのモットーで、子どもを信じ、能力を潰さずに伸ばしてあげたいものです。