幼児期からの「基礎教育」は重要だが・・・
「子どもの知育は小学校からではなく、幼児期から基礎教育を始めることが重要。幼児期に積み重ねた知育が、小学校に入ってから理解力の差を生み出すことになる」。
これは、幼児教育に長年携わってきた私が確信していることです。では、幼児期に必要な基礎教育とは、どのようなものでしょう。多くの人は「子どもに勉強をさせる」というと、すぐに参考書や問題集、ドリルなどを思い浮かべるようです。
しかし、まだ文字も上手に書けない子どもにペーパー学習は必要でしょうか。もちろん、子ども自身が遊び感覚で楽しく取り組むことができるのなら問題はありません。そうではなく、あまり乗り気でない子どもにまで鉛筆を持たせる必要はないと考えるのです。
よくできた問題でも、ペーパーに書いてあるものは本物ではありません。「ボールが5個ありました。そのうち2個がなくなりました。いくつ残ってますか?」といっても、そこにあるのは絵に描いたボールです。子どもは頭の中でボールを動かしながら、問題に取り組まなければなりません。
ものを触り、動かし、どう変化するのかを体験
これが、幼児期の子どもにとって難しいため、簡単な問題でも手間取ってしまうことがよくあります。これでは勉強に対して苦手意識を持ってしまいかねません。こうした事態を避け、スムーズに理解させるためにも、幼児の教育には現実にある「もの」を使うことが欠かせません。
「鉛筆が3本ありました。また2本買ってきました。全部でいくつになりましたか?」という問題を解くなら、実際に鉛筆を使えばいいし、「コップの水」の問題なら、実際にコップを使えばいい。
こうした教育方法を、私は「事物教育(じぶつきょういく)」と名づけました。
実際にあるものを触り、動かし、どう変化するのかを体験すること。そのステップを踏んで初めて子どもは理解できるのです。そして、事物を通して理解が得られれば、ペーパーの上でも解けるようになります。
まずは「見て・触れて・働きかける」ことから始めることが重要です。