ドル円レートの平均は1ドル109円
やすお:では、円は対ドルで考えると、いくらぐらいが適正なのでしょうか?
永濱:これはいろんな見方がありますね。
先ほどお話ししたように、90年代後半~最近までのドル円レートを平均すると、1ドル=109円程度です。ただ、少なくとも日本政府が望ましいと考える為替の水準は、だいたい100〜130円の間と見られます。
やすお:なぜ100~130円なのでしょうか?
永濱:過去の為替介入のタイミングを見ると、その枠の中から外れたときに行ってきたからです。
為替介入とは、為替レートが適正ではないと考えられるときに、通貨当局が適正に近づけるように市場に介入することです。
たとえば、円が安くなりすぎたときは、円高に誘導するために、市場で円を買います。これが円買い介入です。逆に、円高になりすぎているときは、円売り介入を行います。
やすお:日本では円買い介入も円売り介入も行われていますか?
永濱:過去を振り返ると、両方行ったことがあります。最後に円売り介入をしたのは、2011年11月で民主党政権のときでした。
円買い介入は、1998年に実施してからしばらくしていませんでしたが、2022年の9月から10月にかけて24年ぶりに実施しましたね。
今回の円買い介入以前に行われた円買い介入のときの為替と、円売り介入のときの為替の平均水準を計算すると、だいたい円買い介入のときは130円程度、円売り介入が100円程度のときでした。
やすお:先日、円買い介入を行ったときは、1ドル140円を超えていましたよね?
永濱:過去の政策当局の行動から考えると、とても容認できる範囲ではなかったということでしょう。
鈴木財務大臣や日銀の黒田総裁が「急速な円安は日本経済にとってマイナス」と言い始めていたのですが、それは「そのまま放置するわけにはいかない」という意味だったのでしょう。
やすお:為替介入はどうだったんですか。うまくいったのか、いかなかったのか。
永濱:私は介入した成果はあったと思っています。ただ、介入だけで為替をコントロールすることはなかなか難しいのです…。
永濱 利廣
第一生命経済研究所
首席エコノミスト