経営者人材の育成と権限委譲システムの構築
4.組織を更に成長させるための経営者人材の育成と権限移譲システムの必要性
前述の通り事業が複数になり、より複雑になってくれば当然、事業を担う経営人材や組織の仕組みも進化させなければならない。まだ業歴も浅く企業規模の小さい企業であれば組織デザインも不要であるが、企業規模が拡大するにつれて、トップ1人がすべての意思決定に関与すれば機動力が低下し、成長スピードは鈍化する。
まず、組織も機能ごとに役割分担し、役割の範囲内で権限移譲していく。これが「機能別組織」であり、今も多くの企業で採用されている組織形態である。更に成長すれば、事業ごとに機能別組織を置く「事業部制組織」へシフトする。事業部制がさらに拡大すれば、事業会社として独立することになる。
一方、拡大した事業部や分社化した事業会社により大きな権限移譲をするとセクショナリズムが更に進み、各社がバラバラに経営するリスクも高まる。現在、複数事業を有する企業やグループを形成している企業は、この問題に直面したことで、より全体最適の視点で戦略の意思決定と内部統制を機能させる役割を担う部署が必要であるという認識を持つようになった。
そして、事業会社の上に純粋持株会社を置き、その役割を純粋持株会社に持たせたのである。こうすることで、事業やグループ企業全体を俯瞰してみることができ、事業間・事業会社間に対して横串の連携と統制機能を強化することができる。
このように、グループ全体の連携強化を目的としてホールディング体制へシフトするケースが増えている。
そして、分権化のメリットとして、より大きな権限移譲を行うことで、事業や事業会社を担う経営人材を育成する機会も創出できるということである。
5.法改正による組織再編のコスト負担軽減
これまで、ホールディング経営体制がなぜ求められるかの理由を述べてきたが、最後に1つ大きな要因がある。それは税制改正の変遷である。ホールディング経営体制へのメリットを認識し、移行を意思決定しても、組織再編を実行する際に多額の税負担がネックになれば実行はされない。
その点でいえば、1997年の純粋持株会社解禁、1999年「株式交換制度」と「株式移転制度」、2000年「会社分割制度」の創設で、純粋持株会社の設立が手続き上は簡単になった。そして、税制については2001年「組織再編税制」、2002年「連結納税制度の導入」、2010年に「グループ法人税制」が施行され、現実的な制約条件であった税制の改正により組織再編がコストフリーな状態になったため、取り組みやすくなったと言える。
このような背景のもと、企業のホールディング経営体制への移行は、ますます増加していくものと思われる。
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