(※写真はイメージです/PIXTA)

「争族」と呼ばれる相続争い。巻き込まれてしまった場合、どう対応すればよいのか。また、これから相続対策をする場合にも、「争族」のリアルと転ばぬ先の戦略をぜひとも知っておきたい。本連載では、弁護士 依田渓一氏の著書『負けない相続』同書「物語編」の3つのエピソードの中から、「地主である父の遺言書に従えば何ももらえなくなってしまう、自称バンドマンの純二」を主人公としたストーリー『遅咲きのスミレ』を紹介。本稿では、遺言の取り分では少な過ぎる場合に押さえておくべき5つの重要ポイントについて、同ストーリーに基づく解説編を一部抜粋して転載する。

ポイント⑤  遺留分侵害額請求の手段選択は戦略的に

(※写真はイメージです/PIXTA)
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遺留分侵害額請求を行う場合、①まずは交渉を行い、②交渉が難しければ調停を行い、③調停も難しいようであれば訴訟を行うのが一般的な流れである。①②③の順番で実施することもできるし、②を経ずにいきなり①から③へ移行することも可能である*6

 

筆者の経験上、合意で解決できる類のものは交渉で終わる一方、解決が難航するものは訴訟を経なければ解決ができず、調停を経てもただ時間と労力がかかるだけで解決しないことが少なくない。

 

そのため、筆者としては、遺留分侵害があり一定額の支払いをしなければならないことを前提に相手方本人やその代理人が交渉を行う姿勢を示す場合には、まずは交渉を集中的に行い、逆に遺留分侵害そのものを相手方本人やその代理人が否定するような場合には、速やかに交渉を終わらせ調停を経ずに訴訟を提起し、訴訟もできる限り早いピッチで進めていくことが多い。

 

時間をかけても相手方から支払われる金額が増えるわけではないし、場合によってはそうこうしている間に相手方が取得した遺産を費消してしまうような場合もあり得るからである*7

 

*6:法律上は訴訟提起の前に調停を経るべきとされているが(家事事件手続法257条1項)、交渉の状況からして調停で解決する見込みがない旨の上申書を訴状に添付すれば、調停を経ずに訴訟提起しても裁判所は受理することが多いように思われる。

 

*7:相手方が遺言等で得た財産を費消してしまう危険性が高い場合には、民事保全手続をとることもできる。しかし、民事保全手続を行うためには保全する遺産の数十%相当額の預託金を供託する必要があるため、実際には実施しないことが多いように思われる。

 

 

依田 渓一

三宅坂総合法律事務所

パートナー弁護士

 

東京大学法学部・東京大学法科大学院卒。第二東京弁護士会所属。

相続・事業承継・不動産分野を中心業務とする。

モットーは、「相談してよかった」と思っていただけるよう、期待の先を行くきめ細かな対応と情熱で、依頼者の正当な権利行使に向けて全力を尽くすこと。

負けない相続

負けない相続

依田 渓一

中央経済社

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