アメリカの銀行からもらった小切手、円に換えたいが…
最近の円安傾向もあり、アメリカの銀行口座を解約して、米ドルを日本円に変えようという方が増えています。以前、カリフォルニアで作った銀行口座の残金を回収するためのアメリカ側の手続については、記事『「海外に残した銀行口座」を解約・返金する方法は?…カリフォルニアの銀行口座の場合』で取り上げたとおりです。
重要なのは、日本に住む皆様が、最終的に米ドルを受け取れることです。
この点、アメリカの銀行から米ドル小切手を発行された場合、日本の銀行によっては小切手の預入(アメリカ銀行への取立)を受け付けてくれないところが多く、注意が必要です。
アメリカの銀行口座、どうやって解約すればいい?
まず、そもそものアメリカの銀行口座を解約する方法ですが、弊所にご相談いただく方は、長年アメリカ口座を使っていないことが多くあります。口座を開設したときの担当者の名刺を捨てている、登録住所を覚えていないこともあります。そのため、銀行口座の存在を確認するため、銀行の窓口に連絡をすることから始まります。
アメリカの銀行の多くは、電話で本人確認をしたうえで、銀行口座の情報を教えてくれます。銀行のカスタマーサポートに電話をすると、銀行の口座番号や口座名義人の名前、生年月日、登録住所等を尋ねられます。解約をしていない限りは、口座を長年放置していたとしても口座がなくなることはないので、通常はこのやりとりで口座の存在を確認できます。
そして、銀行口座を解約したい旨を伝えると、たいていの場合、解約フォームを案内してくれます。手続ですが、口座に残っている米ドルをcheck(小切手)で発行してもらうか、wire transfer(銀行間送金)で回収するかの2つ方法があります。いずれにしても、残額をゼロにして口座が閉鎖(closure)されるので、これで解約の手続は完了となります。
アメリカでいまなお多用される「check(小切手)」
問題は「米ドルを日本側で確実に受け取れるか」「着金できるか」ということです。というのも、米ドル口座を日本で持っていれば、wire transfer(銀行間送金)により直接アメリカの銀行から振り込んでもらうのが簡便で望ましいのですが、アメリカの銀行によっては、送金を受け付けてくれないところもあるのです。とくに国際相続の案件では、日本の相続人に対する送金を受け付けない場合が多くあります。
そのような国際相続のケースにおいて、アメリカの銀行がよく選択する支払方法が「check(小切手)」です。アメリカでは未だに、小切手が各種支払の決済手段として使われています。
アメリカでは銀行間送金の手数料が依然として高いということもありますし、小切手は手書きで金額等を書く古いやり方ではありますが、逆にそのほうがコンピュータ上の入力ミスと比べて人為的ミスが少ないともいわれています。最近では、スマートフォンで小切手をスキャンすることで、小切手の預入(Deposit)をでき、小切手の取り扱いも便利になっています。
口座のお金を「小切手でもらう」リスクとは?
そのような背景・事情もあり、アメリカの銀行によっては、銀行間送金を受け入れず、小切手の発行しかしないという回答をしてくるところがあります。
ここで問題になるのが、日本側において、アメリカの銀行から発行されたドル建て小切手を受け入れ、アメリカの銀行に対して取立をしてくれる日本の金融機関が少ないということです。
ここ数年、マネーロンダリング防止、偽造や変造のリスク回避といったことを理由に、海外発行小切手の取立業務を停止する日本の大手銀行が増えています。弊所が取り扱う国際相続案件でも、アメリカ側の弁護士から「遺産の分配を小切手ですると日本では換金できませんよね?」と聞かれることもあります。
日本国内で小切手を受け付けてくれる銀行
国際相続等を理由にアメリカの銀行が日本の相続人宛に小切手を発行した場合に、その受入、取立業務を行ってくれる金融機関が日本にもないわけではありません。米ドル口座を持っていなかった個人からの新規口座開設も、受け付けてくれる金融機関もあります。また、米ドルの取立が無事できて日本の口座に着金がされた後、デビットカードの決済機能のあるキャッシュカードが使えて、口座内の米ドルを海外の買い物等で使えるサービスを用意している金融機関もあります。
もちろん、口座開設ができるか、また海外の銀行への取立を行ってくれるかは、口座名義人の属性、小切手の金額、口座開設の目的・使途、小切手を発行した国や取立先の金融機関等、個別具体的事情によります。
国際相続案件を多く手掛ける弁護士であれば、事前に相続人の方から事情をお聞きして、金融機関に相談を行うことで、円滑に口座開設、遺産の分配を行うことができることもあります。小切手は、換金できる有効期限もありますし、日本人にとって特に不慣れだと思いますので、その取扱について早めに専門家に相談されることをお勧めします。
中村 優紀
中村法律事務所 代表弁護士
ニューヨーク州弁護士
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