「海外に残した銀行口座」を解約・返金する方法は?…カリフォルニアの銀行口座の場合【弁護士が解説】 ※画像はイメージです/PIXTA

急速な円安が進行する中、忘れていた、あるいは放置していたアメリカの銀行口座のドルを取り戻したいと考える方が増えています。しかし、長期にわたって休眠させていた場合など、解約や返金が可能かかどうか、不安があるのではないでしょうか。国際法務に精通する中村法律事務所の中村優紀代表弁護士が解説します。

休眠口座であっても、解約・返金は可能

「アメリカに残している銀行口座、今からでも解約、返金できますか?」

「休眠口座になっているので、もう手遅れでしょうか?」

 

円安ドル高が急に進んだことで、忘れていたアメリカ銀行口座のドルを取り戻したい、という相談を最近よく受けます。

 

結論から言うと、解約、返金は可能です。

 

今回は、カリフォルニアの銀行口座について回収する方法をお伝えします。

 

カリフォルニアでは、通常、3年間以上取引がない銀行口座は、カリフォルニア州政府に移管されることになっています。ただし、移管されるといっても、お金が没収されるわけではなく、所有権は引き続き名義人のままです。所有者と連絡が取れない等の理由で、所有者にお金を返還することができない口座として扱われていて、未請求資産(Unclaime Property)といいます。

 

Unclaimed Propertyの所有者は、下記のウェブサイトを通じて自身の銀行口座を探して返金の手続きを進めることができます。

 

Betty T. Yee California State Controller

https://ucpi.sco.ca.gov/en/Property/SearchIndex

 

例えば、ご自身の名前を入れるだけで、銀行名、口座の種類、金額、そして登録住所が出てきます。プライバシーはどこに行ったのかと思いますが、所有者と連絡が取れなかった以上、銀行はこのような措置をとることが認められているのです。ちなみに弊所で扱った案件では、20年以上の前の銀行口座でも上記のデーターベースに情報が残っていました。

日本に居住する日本人が返金請求する際の「必要書類」

ご自身の銀行口座が特定できたら、それがあなたの所有物であることを証明することで、返金をclaim(請求)することになります。日本に居住する日本人が請求する場合、主な必要書類は以下のとおりです。

 

★Claim Affirmation Form

★現在有効な日本のパスポートコピー

★アメリカのSSN、それがなければForm W-8 BEN

★日本の現住所を証明する書類(クレジットカード明細、光熱水費の領収書等)

★過去のBank statement(取引明細)原本(アメリカの登録住所から既に退去している場合。もう保管していないときは別の追加書類が求められる)

 

Claim Affirmation Formは、公証(notarization)が必要となります。オンライン公証が進んでいますが、カリフォルニア州ではまだ正式に認められていないことはこちらの投稿で触れた通りです。

 

現住所の証明書類は、翻訳を作成して提出をすることが一般的です。

 

以上がカリフォルニア州の手続ですが、他の州では、州政府に移管がされずに、銀行側で保管が継続されている場合もあります(例えばオハイオ州)。その場合は、休眠(dormant)になっている状態からreactivateさせることで、解約・返金の手続きを進めることができます。返金も、海外送金を受け付けている銀行があります。逆に、小切手(check)は日本では換金ができないことが多いので、小切手で残金を受領することは推奨していません。

 

アメリカに銀行口座をお持ちの方で、回収が面倒と思って放置していた方は、円安ドル高になったこの機会に、claimを検討されてはいかがでしょうか。州政府から求められる書類はケースごとに異なり、州ごとにclaimの可否、そして手続が定められています。

 

※こちらの原稿内容は執筆時点のものです。税務に関する法改正、制度変更等の最新情報は、アメリカの税務に詳しい税理士・会計士にご相談ください。

 

 

中村 優紀
中村法律事務所 代表弁護士
ニューヨーク州弁護士

 

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    中村法律事務所 代表弁護士
    ニューヨーク州弁護士 

    弁護士登録後、国際コンプライアンス案件を専門とする矢吹法律事務所に入所。8年以上に渡り、国際カルテル案件等に従事。

    ニューヨーク州の弁護士資格を取得し、米国大手法律事務所Gibson, Dunn & Crutcher LLPのサンフランシスコオフィスに執務する。

    2018年、中村法律事務所の開設後は、日系企業向けにアメリカ進出時の法的サポートを行うほか、製造業の海外販路拡大、飲食業の海外イベント出店、国際取引契約、クロスボーダーM&A、海外現地法人設立といった取引案件を担当。また、海外不動産トラブル交渉、海外の債務者への債権回収、アメリカ大使館での証人尋問といった紛争案件の代理も務める。最近は、英語対応できる日本法弁護士として、海外上場会社の日本法人向けにも多くのアドバイスを行っている。

    個人向けには、海外資産を有したまま亡くなった時の国際相続を専門的に取り扱い、海外不動産を購入した日本人向けに海外口座解約を含む様々な手続きを受任。これまでアメリカの相続制度やその対応策に関するセミナー講師、執筆を多数行っている。

    中村法律事務所(https://nakalaw.jp/

    著者紹介

    連載敏腕国際弁護士が解説!「アメリカ不動産オーナー」が知っておきたい法律基礎知識

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