“一見”ジェンダー平等夫の思わぬ落とし穴
・一見、理想的な共働き夫婦
・産休中でも家計は「二人で平等」
・「どうやって一人で子育てするの(笑)」
モラハラは「高収入の夫×専業主婦」の昭和的組み合わせで起こると思われがちです。たしかにその傾向はありますが、実は「一見理解ある夫×キャリアウーマン」の今どきな組み合わせでも、頻繁に起こります。
コンサルティング会社に勤務して、順調なキャリア街道を進むF代さん(33歳)。忙しさの合間を縫って同期入社の夫と交際を始めると、1年ほどで結婚の話になりました。
結婚しても仕事を続けたいと話すと、「もちろん構わないよ。家事も分担しよう」と快く受け入れてくれたと言います。
過去に交際した相手からは仕事を辞めて家庭に入ってほしいと言われた経験もあったため、「理解ある人に出会えて良かった」と安心して入籍したそうです。夫はおとなしいタイプで、活発なF代さんと対象的なところも魅力だったということでした。
リモコンを投げつけ「自分が偉いとでも思ってるの?」
結婚してすぐ、F代さんは大きなプロジェクトに参加することに。終電での帰宅や出張が重なり、すれ違いの生活が続きました。
ある日の夜、久しぶりに夫とゆっくり過ごしていると、「残業が多くてつらい」「仕事辞めて専業主婦になろうかな」と、F代さんの口からつい愚痴がこぼれました。すると夫は「仕事を続けたいと言ったのは君じゃないか」とため息。
「仕事を辞めたら生活費はどうするんだよ」と言い、夫はどんどんヒートアップ。ついには近くにあったリモコンをF代さんに投げつけて、「自分が偉いとでも思ってるの?」とそのまま寝室へ。
夫が怒るのを初めて見たF代さんは、怖くなって、家で仕事の愚痴を言うのはやめました。
妊娠、産休へ。それでも「共働きだから家計は平等」
その後しばらく平穏な家庭生活が続き、F代さんは出産を考えるようになりました。夫に希望を伝えると「君が育てるならいいんじゃない」と特に反対はされませんでした。
その後F代さんは妊娠しましたが、産休に入るにあたり一つ気がかりがありました。それは、毎月の家計の支払いです。「共働きだから家計は平等」という夫の意見で、家賃、光熱費、食費など、夫婦できっちりと折半していました。
それまでは夫と収入がほぼ同じでしたが、産休に入れば収入が大幅に減ります。同じ会社の夫は当然それを知っているはずなのに、生活費の負担について何も言ってこないのです。
いよいよ産休に入り、「これまでと同じ額を家計に入れるのは難しい」と伝えると、夫は「二人で平等にするって決めたでしょ」、「話が違う」と怒り出しました。頑として譲らないため、F代さんは仕方なく貯金を切り崩して、以前と同じ額の支払いを続けました。
やがて出産したものの、出産費用は家計からではなくF代さんが負担しました。子どもの服やおもちゃも、「君が希望して産んだ子なんだから」と、夫は一切負担してくれません。
夫は週の半分は保育園に迎えに行ってくれますが、F代さんがいる時は、赤ちゃんが泣き出しても目の前でスマホをいじるだけで、抱っこしようとすらしません。しだいに夫はF代さんをあからさまに無視するように。