地方名家の二世夫。義理母・姉からも罵詈雑言の嵐…
・跡取り息子として溺愛され育つ
・「金さえ払えばいい」という思考
・地元の弁護士は夫の味方
ひと口にモラハラ離婚といっても、いろいろな類型があり、だからこそ夫との交渉にもいろいろなアプローチがあります。相手の性格や家庭の事情など、いろいろな要素を考えて戦わなければなりません。
E美さん(47歳)の夫は、地方名家の生まれ。祖父の代から続く建設会社の社長を務めています。結婚21年で、子どもは高校2年生の長女と中学1年生の長男の二人。夫の実家と同じ敷地にある家に住み、生活費もきちんと渡されます。周囲からは「玉の輿に乗ったね」とうらやましがられる生活を送ってきました。
夫は表面的にはいい人ですが、跡取りの長男として親から甘やかされて育ったためか、道徳的な面に問題がありました。特に酒癖が悪く、会合と言っては遅く帰り、鍵を忘れてドンドンと家のドアを叩きます。そしてリビングに寝そべると、「お前みたいな田舎者を拾ってやったんだ、感謝しろ」「お前の家族は寄生虫だ」と罵詈雑言の嵐。
夫とその両親は、跡取りの長男を溺愛して、プレゼントやお年玉の金額も長女と差を付けます。夫は長女に学費は出すものの、良い成績をとっても「勉強ができると将来嫁に行けないぞ」と言うことも、E美さんの悩みの種でした。
夫の言う通り、E美さんの両親は夫の家から経済的な援助を受けています。弟の就職先も紹介してもらいました。両親や弟の生活を考えると、E美さんはどんなにつらくても夫に言い返すことができませんでした。
心を閉ざす娘、夫に似ていく息子
会社の部下やスナックの女性との不倫は日常茶飯事。ある日、E美さんが「娘が多感な年頃になってきたので少し考えてほしい」とたしなめると、夫は「謝ればいいんだろ!」と怒鳴りました。
そして寝ていた子どもたちを起こすと、3人の目の前で50万円をテーブルに叩きつけ、同じ敷地の実家に帰り、「嫁に追い出された」と義理の両親に言いつけたのです。
翌朝、義母が訪ねてきました。謝りに来たのかと思いきや、「私はもっとひどい目に遭ったけど我慢してきたのよ。この程度のことで騒がないで」「あなたの実家の面倒も見て、家まで建ててあげたのに」「不満なら長男を置いて出ていきなさい」……。
信じられないような言葉を延々と浴びせて、泣き出すE美さんを尻目に帰っていったそうです。夫はその夜、何事もなかったかのように帰宅しました。
それ以来、夫は不倫をしてE美さんに注意されるたびに、ブランドのバッグや服を買ってきて、「これでいいんだろ」と開き直るようになりました。物が欲しいわけではない、不倫をやめてほしいと言っても、聞いてくれません。
友人に相談しても、「バッグがもらえるなら私も浮気されたいわ」「あなたも遊べばいいのよ」と、わかってもらえません。一生我慢すると覚悟していたE美さんでしたが、子どもが成長すると事情が変わってきました。