(※写真はイメージです/PIXTA)

精神保健福祉士・野坂きみ子氏の著書『仕事で悩む若者は適応障害なのか』より一部を抜粋・再編集した本連載。ここでは、多くの若者がメンタルクリニックで身体症状を訴えている実態について見ていきます。

「パワハラと超過勤務」が存在しなくても…

ブラック会社の特徴と近縁ですが、職場環境の原因は、大きくパワハラと過労と理不尽な労働形態です。パワハラ単独ということもありますが、パワハラと超過勤務がセットになっていることも多いです。

 

残業を断れないような状況、通常の勤務時間では終わらないような業務を押しつけるなど、心理的負担の上に身体的な負担も増し加わり、正常な判断ができなくなったり、うつになったりします。

 

また非正規雇用の場合、正規雇用者との格差、差別、雇い止めの不安、がんばっても報われない、つらくなるなどの内在的な問題もあります。労働契約法の改正(平成25年施行)などで改善された面もありますがすべてが解決されたわけではありません。

 

今回考えてみたいのは、このような環境的要因が突出していない場合です。きっかけはあるかもしれませんが「そうか」と納得できるほどでもない、ブラックというほどでもない(残念ながら全くホワイトという会社も多分ないので)、どうしてそうなったか今ひとつはっきりしないような場合です。

 

それらのエピソードは後に触れますが、研修が終わったらということもありますし、仕事の責任を求められたらということもあります。つらい仕事が終わったあとということもあります。

 

それまでのつらさが後を引き不安になり、出勤するのがつらくなり、症状に出てきてメンタルクリニックを受診する。そして往々に適応障害と診断されます。

 

適応障害と言われると、その人自身の内側にある病気ではなく、置かれている環境に適応できず精神症状をきたしている状態、環境に適応できないというニュアンスをより強く与えます。

 

すると少し気持ちが楽になるかもしれません。そして往々に休職診断書が出ます。まぁひとまず休みましょう、職場から離れましょうということです。

 

当然ながら、一定程度休み復職できる場合とできない場合があります。また、すぐさま退職する場合もあります。

 

一口で言うと、その人と職場の関係性ということになりますが、症状が軽い、早期に受診した、職場の配慮によって異動になったなどであれば、復職の可能性も高いでしょう。しかし治療が長引いたり結局退職したりすることも少なくありません。

次ページ若者の「働く様相」が変わってきている?

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『仕事で悩む若者は適応障害なのか』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

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