日本の「財政のコントロール」に対し、政治家は…
コロナ禍に至っても、財政均衡を強引に図るため、30兆円近くの予算がいまだに使われていないにもかかわらず、1円のお金も景気対策のために使わなかった……。
このため、かえってGDPがマイナス成長してしまい、更に財政が悪化してしまう……、近年の出来事で、コロナ禍の真っただ中において当時の菅義偉内閣が行ったこの間違った施策は、その典型的な例ではないでしょうか?
しかし、菅内閣だけでなくこのような事は、苦しい経営を強いられている企業の経営者ならば、ついついやりがちな事です。全ての経営者は、本当は間違っているとわかっていても、苦しい経営を強いられているため、どうしても目先の借金返済に追われてしまい、たびたび正しい決断が下せない事は、本当によくある事なのです。
市場が日本政府の借金問題で一番関心があるのは、実は日本の借金の額ではなく、この借金自体を政府がきちんとコントロールできているのかどうかという事です。
残念ながら財政再建計画の詳しい中身を政府が公表していない以上、今の岸田政権や財務省からは、今後どのようにしてこの多すぎる日本の借金をコントロールしていくのかという計画の全容が全く見えてはきません。
反対に私の目からは、彼らがいかに選挙に影響しないようにしながら目先の国債発行額を減らす事に必死で、財政再建に必要なもっと大きな視点で国の借金を捉え、今後この借金とどう向き合っていくのかといった一番大切なところが、彼ら自身にも見えていないように感じます。
むしろ、今の政治家の先生達は、多重債務者が陥るような思考、あくまで国民に対してはさも調子の良い事をいいながら、陰で増税や社会保障費の削減などにより、目先の増え続ける借金を少しでも減らす事にしか、もう頭が回らなくなっているのではないでしょうか。
2021年11月号の『文芸春秋』にて、現役の財務事務次官による、当時、加熱していた衆議院総選挙における各党のいわゆる「ばらまき政策」を批判する投稿が寄せられ、世間ではこの問題が大きな話題になりました。
政府の公庫には無尽蔵にお金があるわけではないのでこのようなばらまき政策は、その後の深刻な財政悪化を引き起こしかねないという懸念から、彼はこのような投稿をしたそうですが、これを発表したと同時にたくさんの有名な知識人や経済学者から、彼の投稿に対して数多くの反発が巻き起こりました。