為替介入とは
為替介入は正しくは「外国為替平衡操作」といいます。
為替相場が急激に変動した場合に、通貨当局(日本では財務省と日本銀行)が外国為替市場において、通貨の売買を行うことをさします。
2022年10月の為替介入は、当時進んでいた急激な円安ドル高にブレーキをかけるため、「ドル売り・円買い」を行ったものです。
「ドル売り・円買い」をすると、米ドルの流通量が増加する半面、円の流通量が減少します。これにより、円高に押し戻す効果をねらったのです。
「ドル売り・円買い」を行うには米ドルの拠出が必要です。その米ドルは、財務省が所管する「外国為替資金特別会計」(外為特会)から拠出します。
米国債を換金して行われた
2022年9月末日の時点では外貨準備高は1兆2,380億5,600万ドル、うち「外貨建て債券」が9,852億7,200万ドル、外貨預金が1,361億1,000万米ドルでした。
これに対し、同年10月末日時点での外貨準備高は1兆1,945億6,800万ドルであり、うち「外貨建て債券」は9,413億3,100万ドル、外貨預金は1,270億1,700万ドルでした。
単純計算すると、2022年10月末時点の外貨準備高は9月末時点と比べ約3.5%減少しています。その内訳をみると、「外貨建て債券」は439億4,100万ドル減少しているのに対し、外貨預金額は90億9,300万ドル増加しています。このことから、主に米国債を米ドルに換金し、それによって為替介入を行ったと推察されます。
なお、為替介入の有無と金額自体は翌月に公表されます。それと、為替相場の動きによって、いつ、いくら為替介入が行われたのかはある程度予測できます。しかし、何月何日に行われたのかは、3ヵ月ごとに公表されます。
2022年10月の為替介入についても、10月21日と24日に行われたことと、投入された金額の総額が6兆3,499億円だということ自体は判明していました。それが、今回の財務省の発表によって、具体的にそれぞれの日にいくら投じられたかが明らかになったということです。
2022年10月の為替介入の効果は?
では、為替介入の効果はあったのでしょうか。
覆面介入が行われた2022年10月21日と24日の動きを確認すると、10月21日には一時7円以上円高となり、24日には一時4円以上円高になりました。
しかし、結局はその効果も一時的・短期的なものにすぎず、円安ドル高の傾向はおさまることはありませんでした。
なお、その後、11月11月に米ドルが大きく下落しました。それを皮切りに、為替相場は円高ドル安傾向に振れ、現在に至るまで緩やかにその傾向が続いています。しかし、その主因は、アメリカのインフレの減速と、長期金利の利上げの鈍化によるものです。財務省・日銀による一連の為替介入とは無関係です。
しかも、「円高傾向」とはいえ、まだ円安というべき水準にとどまっています。
結局、2022年10月の為替介入は、6兆3,499億円という莫大な額を投入しておきながら、きわめて限定的・一時的な効果しかなかったと断じざるをえないのです。