(写真はイメージです/PIXTA)

ウクライナ戦争や米中の対立、約40年ぶりのインフレなど、悲観のなかで始まった2023年の株式市場。しかし、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は「強気相場が育っている可能性」を指摘します。その根拠とは……詳しくみていきましょう。

米国当局の「真の敵」はデフレ…インフレではない

第2に見過ごされている要素があるとすれば、米国政策当局の「真の敵」はなにかの見極めである。

 

詳述は別の機会に譲るが、FRBの最大の脅威は「インフレ」ではなく「デフレ化」であり、Japanification(日本化)であることははっきりしている。オーバーキルに結び付くような利上げは起きないと安心して見ていてよい。このことが明らかになれば、株価は急騰するだろう。

 

FRBは本質的にデフレと戦っている。デフレとは潜在的に存在している成長可能性未達の結果であり、それは政策のサボタージュを意味し、必然では決してない、というものが米国の経済学者と政策当局にとってコンセンサスである。

 

日本ではあいまいにされているが、米国の経済政策の最終ゴールは生活水準の向上であり、FRBの2大任務(dual mandate)とされている最大雇用と物価の安定はそのための手段に過ぎない。

 

FRBは無理かつ不必要な引き締めは早晩転換させるであろう。

過度の賃金上昇を抑制している米国労働市場の効率性

第3に見過ごされていることは、景気減速の下でも好労働需給が続き、かつ賃金上昇率がピークアウトしていることである。明らかに労働市場が弾力的に動き、資源配分をさい配しているといえる。

 

[図表8]ひっ迫している労総受給
[図表8]ひっ迫している労総受給

 

コロナ禍の下での異常な労働需給ひっ迫が引き起こした、トラック運転手やウェイター、ウェイトレスなど接客業での人手不足は緩和に向かい、賃金上昇率は鈍り始めている。また高給セクターの金融や情報部門での雇用の伸びが低いことも全体の賃金水準の伸びを待引き下げている。

 

[図表9]ピークアウトした平均時給(前年比推移)
[図表9]ピークアウトした平均時給(前年比推移)

 

しかし企業の求人意欲は強く、すべてのセクターで雇用が増加している。

 

[図表10]米国セクター別雇用者数の推移…全産業分野で雇用増加続く(ITバブル崩壊時、リーマンショック時との大きな相違)
[図表10]米国セクター別雇用者数の推移…全産業分野で雇用増加続く(ITバブル崩壊時、リーマンショック時との大きな相違)

 

旺盛な消費が広範な雇用機会をもたらすという好循環は、まったく損なわれていない。

 

1990年代前半の情報化革命、BPR(ビジネスプロセスリ・エンジニアリング)革命の時は、機械に置き換えられたホワイトカラーが失業し、労働市場が不振のままのジョブブレス・リカバリーが続いた局面があった。当時と比較すれば、現在がいかに新規雇用機会の創造が旺盛であるかがわかる。

 

以上のように底流にある要素を考慮に入れるならば、2023年1月の意外な世界株高は大きな上昇サイクルの初期場面である可能性が十分にあることを、念頭に置きたい。

 

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※本記事は、武者リサーチが2023年2月6日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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