「二重盲検試験」で判明した効果とは?
グルコサミン・コンドロイチンについては、膨大な数の基礎および臨床研究がなされてきました。科学論文検索サイトで検索すると5000件を超える論文が発表されており、ここまで研究されているサプリメントは、おそらくほかにないのではないでしょうか。
多くの臨床研究では、グルコサミン・コンドロイチンのひざ痛に対する効果と変形性膝関節症の軟骨変性を防げるかどうかという2点が論争されています。それでは、グルコサミン・コンドロイチンについての肯定的な研究と否定的な研究をそれぞれご紹介します。
1990年代は、グルコサミン・コンドロイチンに対して肯定的な論文が優勢でした。ハウプト先生らは、変形性膝関節症患者101人に対して行った二重盲検試験(全く同じ形状の2種類の薬を作るが、一方は有効成分の入ったもの もう一方は有効成分の入っていないプラセボ(偽薬)。医師も患者さんがどちらの薬を飲んだか分からない状態で薬の効果を判断する試験)でグルコサミン塩酸塩はプラセボに比べてひざの痛みを改善したと報告しています。
2000年にはマカリンドン先生が1996年から1999年に行ったグルコサミンとコンドロイチンを用いた二重盲検試験の中から、科学的評価が可能な6つの論文を解析しました。
複数の臨床研究のデータを分析する手法は「メタアナリシス」といって、現在の医学界では最もエビデンスレベルの高い研究とされています(しかしながら、論文の選択を誤れば間違った方向に結論されてしまうという大きな問題もあります)。
多くの反論を生んだ「研究結果」
マカリンドン先生は6つの論文のエフェクトサイズを0.44としています。エフェクトサイズとは治療の成績からプラセボの成績を引いたものをばらつきで割った値で、0.8はかなりの効果、0.5はほどほどの効果、0.2で弱い効果があるとされています。0.44というのは中等度の効果といえるでしょう。
続いて2001年ベルギーのレジンスター先生らが、有名なイギリスの科学雑誌『ランセット』に発表した研究は、世界中の関節症研究者を驚かせました。彼らは212人の変形性膝関節症患者にグルコサミン1500㎎とプラセボを3年間飲ませ、痛みや機能等の臨床症状と関節裂隙(関節軟骨の量を表す)の変化を調べました。
すると、3年の間にプラセボ群では関節の隙間が減っていましたが、グルコサミン群ではほとんど減っていなかったのです。さらに痛みも、プラセボ群が約10%の改善だったのに対しグルコサミン群では30〜40%減少、機能面も改善していました。
「これまで世界中の製薬会社が研究しても変形性膝関節症の軟骨変性を防いだ薬はなかったのに、こんな単純なアミノ糖にそんな効果があるはずがない」と、多くの研究者が反論し、ここから反対派の論文が目立ってきます。
2002年、ヒューズ先生らは6カ月の追跡調査の結果、グルコサミンはプラセボと差はないと報告しました。さらに2004年、以前にメタアナリシス結果を発表したマカリンドン先生らはインターネットを利用した臨床研究を行いました。
205人の患者を、グルコサミン1500㎎摂取する群とプラセボ群に分け、12週間後の痛みの度合い、ひざのこわばり時間、12週の間に痛み止めを飲んだ回数を調べました。その結果、グルコサミン群とプラセボ群に差がなかったと報告しています。