「除名」の厳格な議決要件もみたすことが確実
「懲罰」のなかでも、「除名」する場合は、「出席議員の3分の2以上の多数による議決」が必要です(憲法58条2項但書)。
参議院の議員総数は248名、定足数はその3分の1の83名です。したがって、出席議員の数が定足数ぎりぎりの83名だった場合、62名の賛成があれば、ガーシー氏を「除名」できることになります。
現在、各会派の議員数は以下の通りです。
【参議院における各会派の議員数(総定数248名・欠員なし・2023年1月31日時点)】
・自由民主党 118名
・立憲民主・社民 40名
・公明党 27名
・日本維新の会 21名
・国民民主党・新緑風会 12名
・日本共産党 11名
・れいわ新選組 5名
・碧水会 2名
・NHK党 2名
・沖縄の風 2名
・その他 8名
このうち、現時点で、少なくとも、与党の自民党と公明党だけでなく、野党では立憲民主党、日本維新の会、共産党も、懲罰に賛成を表明しています。議員数を足し合わせると、これらの政党だけで、総議員数の3分の2超(166名以上)となります。ガーシー氏にとっては非常に旗色が悪く、除名はほぼ不可避といわざるを得ません。
除名されたあとはどうなるか?
ガーシーの除名が不可避として、そのあとはどうなるでしょうか。
ガーシー氏が除名された場合、参議院議員の資格を失うことになります。
ガーシー氏は2022年の参議院議員選挙における比例代表で選出された議員なので、所属するNHK党のガーシーの次の得票数を獲得した山本太郎氏(れいわ新選組代表の山本太郎氏とは同姓同名の別人)が繰り上げ当選となります。
NHK党にとっては、勢力を維持することは可能です。しかし、今回の件により事実上、ますますのイメージダウンにつながることが考えられます。
訴えてもムダ
なお、ガーシー氏が懲罰の効力を争うため訴訟を提起する可能性は考えられなくもありません。その真否はともかく、一部でガーシー氏が「最高裁まで争う」と述べていたという報道もありました。
しかし、それは間違いなく徒労に終わります。というのも、裁判所が参議院の懲罰の効力の是非について判断することは、参議院の議院自律権と正面から抵触するため、「司法権の範囲外」として訴えが「却下」すなわち内容の審理にすら入らず「門前払い」されることが明白です。
なお、最高裁判所は、地方議会の議員に対する懲罰については、「出席停止」「除名処分」については司法審査が及ぶと判示しています(岩沼市議会議員出席停止事件最高裁判決(最判令和2年11月25日)参照)。しかし、これは、地方議会の自律性は「部分社会の法理」とよばれる理論に基づくものにすぎないからです。
これに対し、国会の議院自律権は、憲法において明言されている強固なものであり、その行使の是非について裁判所が審査することは憲法上「越権行為」ということになります。したがって、地方議会における懲罰について判示した上記判例は、ガーシー氏の訴えが却下されずにすむ根拠にはなりえません。
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