ガーシー氏の「除名」がほぼ確実な理由
ガーシー氏がすみやかに帰国して国会に登院しない限り、「除名」処分がほぼ固まったといってよい理由は以下の通りです。
・「除名」以外の懲罰が無意味
・「除名」の厳格な議決要件もみたすことが確実
「除名」以外の懲罰が無意味
まず、「懲罰」のなかで「除名」以外の手段が無意味であることが挙げられます。
すなわち、憲法58条2項は、「議院自律権」の一環として、「両議院は、(中略)、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。」と定めています。
これを受けて国会法・参議院規則において、懲罰事由・懲罰の種類・懲罰の手続きが定められています。
ガーシー氏の懲罰事由は、「正当な理由がなくて召集日から七日以内に召集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議又は委員会に欠席したため、若しくは請暇の期限を過ぎた」というものです(国会法124条)。
ただし、これだけでは懲罰委員会にかけられることはありません。
議長が「招状」を発し、ガーシー氏が「その招状を受け取った日から7日以内に、なお、故なく出席しない」ことを要件として、議長が懲罰委員会に付議されることが定められています(同条)。
今回、尾辻参議院議長からこの「招状」が発せられたというわけです。もし、ガーシー氏がこれを「受け取ってから7日」以内に登院しなければ、懲罰にかけられるということになります。
なお、この「招状」をいつガーシー氏が「受け取る」ことになるかが一応問題となります。尾辻参議院議長が「招状」を手渡したのは、NHK党の浜田政調会長であり、ガーシー氏本人ではありません。
国会議員は政党に所属していても「全国民の代表」として独立した存在です。したがって、ガーシー氏本人に受け取らせなければ意味がありません。この点については、立候補の時点で届出がされた住所に「内容証明」で送達することが想定されます。
ガーシー氏が「受け取っていない」とゴネたとしても、受け取ったと同視して扱われます。
次に、どのような「懲罰」が想定されるかということです。国会法において、「懲罰」として定められているのは以下の4つです(国会法122条)。
【国会法112条各号で定める懲罰】
1. 公開議場における戒告
2. 公開議場における陳謝
3. 一定期間の登院停止
4. 除名
このうち、「1. 公開議場における戒告」「2. 公開議場における陳謝」については、登院することが前提である以上、課する意味がありません。
また、「3. 一定期間の登院停止」は、そもそもガーシー氏がこれまで登院拒否の状態を続けてきたことを考慮に入れると、意味がありません。
残るは「除名」しかないということです。