一般的なサラリーマンなら、年金生活も平穏なものに
ここ数年、老後の生活資金の不安がしばしば話題となってきました。「老後資金2000万円問題」などもあり、自分の老後に一体いくらお金を準備すればいいのか、頭を抱える方も少なくありません。
そもそも公的年金はどの程度かというと、国民年金なら満額で6万4,816円(2022年度)、夫婦でおよそ月13万円。会社員や公務員といったサラリーマンなら、さらにそこへ厚生年金がプラスされる計算です。
厚生年金の受給額は「①平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数」と「②平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数」という計算で算出します。
大学卒業後、60歳の定年まで働いた平均的な会社員のケースを見てみましょう。
計算が少々ややこしいので、上記の②のみで算出すると、厚生年金部分は、男性:11.4万円程度(平均標準報酬額47万円)、女性:8.2万円程度(平均標準報酬額34万円)となり、国民年金と合わせると、元男性会社員なら月17万円強、元女性会社員なら14万円強となります。
共働き夫婦なら月31万円程度、妻が専業主婦なら24万円程度、夫が専業主夫なら20万円程度が受給金額となります。
夫婦ともに65歳以上の無職世帯の支出は平均25万円程度(『家計調査 家計収支編』総務省、2021年)。そこから税金や保険料が3万円ほど引かれているかたちです。
高齢者夫婦の平均的な家計支出
実支出:255,100円
〈内訳〉
食料:65,789円
住居:16,498円
光熱・水道:19,496円
家具・家事用品:10,434円
被服及び履物:5,041円
保健医療:16,163円
交通・通信:25,232円
教養娯楽:19,239円
その他の消費支出:46,542円
非消費支出:30,664円
出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)
※65歳以上の夫婦一組の世帯(無職世帯)
上記の家計支出を見る限り、元会社員の共働き夫婦、妻が専業主婦の片働き夫婦、夫が専業主夫の片働き夫婦のいずれも、やりくりすれば、年金だけでどうにか暮らすことはできそうです。
自営業の夫婦の場合は年金だけでは厳しいでしょうが、サラリーマンには得られない「定年なし」というメリットがありますから、自分たちのペースで適度にやっていくことになるのでしょう。
「老親の問題」から目をそらしていると…
また、定年退職後の60代・70代でも、アルバイト等で収入を得ている人もたくさんいます。毎日の生活費や老後資金の足しにするため、年齢なりに、仕事に励んでいるのです。
「健康には注意して、あとはマイペースに働ければいい」
「夫婦2人、のんびりやっていければ幸せ」
ところが、そんな自由で気ままなシニアライフが送れる人たちばかりではありません。定年退職後に控える、老親の介護問題があります。
定年退職した60代が、80代・90代の親を看る。日本人の平均寿命が伸びた結果、「老老介護」となるケースが増えているのです。自宅介護の6割がこの状態だともいいます。
「年はとったが、まだ自分のことはできているし…」
「声を聞く限り、大きな変化はなさそうだが…」
子どもは、親の老化になかなか気づけないもの。ましてや、地方で暮らす親と都市部で暮らす子どもが電話で話す程度だと、足腰や認知機能の衰えは、はっきりとはわかりません。
「ちょっと、大変よ!」
ある日突然、実家のご近所さんや、近隣に暮らす親族から一報が入り、60代の子世代の生活が一変…というケースは、決して少なくないのです。
屋内・屋外で転倒して入院、いつも歩いている道に迷って保護される…といったことは、高齢者ならだれでも起こりうること。
仕事から解放された定年退職後、やれやれと思った矢先に始まる親の介護。身体的なつらさはもちろんですが、金銭的な負担もあります。
介護費用は、介護される高齢者自身の年金や貯蓄などで賄えるケースがほとんどですが、1割はお金がなくて介護サービスを受けられないとのこと。自分の親がそのような状態なら、子どもが費用を負担するしかないでしょう。また、介護の平均期間は5年1ヵ月ですが、自分の親がどうなるか、こればかりはだれにもわかりません。もし夫婦がひとりっ子同士なら、4人の親を介護する可能性もあるのです。
施設に入所してもらうにしろ、自宅へ引き取るにしろ、落ち着く先が決まるまでは、親のところへ頻繁に通いつつ、いろいろな手続きのためにあちこち足を運ぶ必要があります。
そして、その後に立ちはだかるのが、「空き家となった実家」や「相続」の問題。プラスの財産だけならいいですが、必ずしもそうとは言えないケースもあるのが痛いところ。
やっと仕事から解放されたのに、重くのしかかってくる「子どもとしての責任」。
このような事態で苦しまないためには、現役時代の、もっと年齢が若い段階で親と話し合い、親の老後について、あらゆる面からめどをつけておくことが重要です。
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