虫歯は身体の成長に異常をきたす
「モンゴルにおける就学児童の口腔衛生状態不良の有病率と相関に関する研究」によると、これらの理由に加え、果物や野菜の摂取不足、保護者が子どもの近くで喫煙すること、また運動不足が子どもの口腔衛生状態不良の要因ともされている。そして「虫歯のある子どもは、身体の成長に異常がある可能性が高い」という。
口腔内の健康を維持することは、全身の健康維持に欠かせない。専門家は、200以上の病気が虫歯の結果として起こり得ると考えている。特に、口腔の病気は子どもの体の成長・発達に直接影響を与えると、国立医療科学大学歯学部のJ・デルガートセグ教授は強調した。
「モンゴルでは10人に1人しか健康な歯を持っていないんです。健康な歯が28本から32本あれば良いと言われています。カリエスリスク(虫歯になる危険度のこと)の指標では、虫歯のある人は完全に健康とは言えません。虫歯のある子どもは、健康な歯の子どもに比べ、成長・発達の指標が遅れていることが、多くの研究によって確認されています。
例えば、3歳児で健康な歯を持っている子と虫歯のある子を比較したところ、虫歯のある子の方が体重が2kgも軽いことがわかりました。海外の研究では、口腔内の治療とリハビリテーションを行った6ヵ月後には、子どもの体重が正常に戻ることが示されています」(デルガートセグ教授)
虫歯のある子どもとない子どもで体の成長に差が
2016年、デルガートセグ教授はモンゴルの幼稚園児の成長・発達に虫歯がどのように影響するかを研究した。同氏の研究によると、虫歯のある子どもは、健康な歯のある子どもに比べて、身体の成長・発達に異常をきたす可能性が1.3倍も高いという。また、健康な歯を持つ5歳の子どもは、同じ年齢の虫歯の子どもと比べて、体重に1.6kgもの差があった。一方、身長の差は0.8センチメートルだった。
「未就学児の体重増減は、子どもの健康状態の重要な指標となります。上記の調査では、虫歯の有無によって彼らの体重と身長の指標は全く異なる結果となりました。世界歯科連盟は、虫歯が原因で200種類以上の病気や障害が人体に発生することを確認しました。したがって、歯の病気を持つ子どもは健康に育つことができないということです」とデルガートセグ教授は強調した。
良い歯の習慣は国の政策レベルで
1日2回の歯磨きという良好な口腔衛生は、むし歯などの口腔内疾患の予防に最も有効な方法のひとつとされている。子どもたちの歯科疾患を減らすためには、良い歯科習慣を国の政策レベルにまで持っていく必要があるのだ。
例えば、キューバでは幼少期からの口腔衛生教育に非常に力を入れている。テレビの視聴者の多い時間帯に口腔衛生に関するテレビ番組を放送し、子どもたちに「甘いものは控えめに」「歯みがきはきちんとしましょう」とアドバイスしている。また、学校でも口腔衛生に関する授業が行われている。
歯をきれいに保っていれば、虫歯にならない。簡単に言えば、いろいろなものを食べれば食べるほど、歯は汚れていくのだ。食後に食器を洗うのと同じように、歯も定期的に磨くようにしなければならない。食べ過ぎると虫歯になる。