ターゲットが持つ「夢」や「ロマン」を巧みに悪用
M資金詐欺というものは明らかに詐欺ではあるが、他の詐欺と比べてみると、それは被害者の『強欲』につけこむようなよくあるパターンの詐欺というよりは、被害者の『夢』『ロマン』『探求心』を巧みに悪用したタイプのものだと言える。
少なくとも蔵人会長の場合は、M資金信者としての『探求心』を悪用されたパターンの詐欺だった。
そして神奈川県警捜査二課に逮捕された武藤、X、Yのうち、武藤は起訴されたがXとYは地検により不起訴処分となっている。
ここからわかるのは、コロワイドの事件ではXとYについては詐欺行為ではなかった、または法律的に詐欺行為として証明できるほどの証拠がなかったという点だ。
状況からすれば、XとYも起訴された武藤とグルなのは明らかなのだが、XとYは詐欺師というより蔵人会長と同類のM資金信者、M資金トレジャーハンターであった可能性がある。XとYにM資金詐欺の進行指南をしたのは武藤だと当局は睨んでたものの捜査の過程で明らかに黒かったのは、武藤だけだったというのが、法的な見解のようだった。
そしてコロワイド事件を知った市民の「今なぜM資金なのか?」という疑問については、M資金の歴史を知るものであれば答えは明確だ。最初のM資金詐欺が大々的に露見した約50年前から、昭和、平成、令和と元号をまたぎながらも、M資金詐欺はコンスタントに発生し続けている。
「M資金詐欺」と「コロナ禍」は無関係
M資金詐欺の特徴でもある『被害者がそれなりの金持ち』『社会的地位が高い人物』という背景から、各事件がなかなか明るみに出なかっただけなのだ。自ら公表しない限り、M資金詐欺被害が世間の明るみに出ることはない。
または被害者から言わせれば、実質的には詐欺行為だと言える内容でも、コロワイド事件のXとYのように法律的には不起訴処分となり、事件化できずに多額の現金だけが獲られてしまったようなケースが埋もれているのだ。
コロワイドの件では「今なぜM資金詐欺なのか?」という疑問に対して、マスコミ各社は「2020年からのコロナ禍で世の中が不安定になっているから、M資金詐欺のような巨額詐欺が再び台頭してきた」と定義付けしていたが、蔵人会長がXたちと現金のやり取りをしていたのは、2017年からであり、その時点では新型コロナウイルスはまだ発生していなかった。
事件が表面化したのがコロナ発生時である2020年だからといって、蔵人会長が新型コロナウイルスによる社会不安でM資金詐欺にひっかかってしまったという解説は明らかにおかしい。
この事件は新型コロナウイルスとは関係なく、M資金に憑りつかれた男たちが織りなした、昭和から連綿と生き続ける『正統なM資金詐欺』なのである。
藤原 良
作家、ライター
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