「値上げ」が認可なしでできる「燃料費調整制度」
わが国では電気料金について認可制がとられていますが、それは、「規制料金」についてです。
「規制料金」とは、電気料金の上限を画するものです。つまり、「値上げはその額までしか認めない」ということであり、そこまでは、認可を受けなくても電気料金を変動させることができるのです。
わが国では電力源である燃料の多くを輸入に頼っており、燃料価格や為替レートが変動すれば、発電コストも変動します。そのたびに「認可」を受けなければならないのは非現実的です。
そこで、「規制料金」を決めて、その範囲内で電気料金を変動させられるしくみになっているのです。この、電気料金を変動させる基準となるのが、「燃料費調整制度」です。
燃料価格や為替レートが変動した場合に、それを迅速に電気料金に反映させることができる制度です。
2022年に発生したウクライナ危機は収束の気配を見せず、石油、液化天然ガス、石炭等の価格が高騰し続けています。しかも、2022年中盤以降、円安傾向が続いています。それらが、燃料費調整制度によって電気料金に反映され、値上がりが続いてきました。そして、既に大手10社の電気料金がすべて「規制料金」の上限に達してしまっているのです。
燃料費調整制度の計算ルール
燃料費調整制度における「燃料費調整額」の計算式は以下の通りです。
「燃料費調整単価」とは、「連続する3ヵ月間」の平均燃料価格をさします。これを、その「3ヵ月間」の最後の月から起算して3ヵ月目の価格に自動的に反映させるのです。
たとえば、2023年1月の燃料費調整額の計算に用いられている「燃料費調整単価」は、2022年8月~10月の平均燃料価格です(【図表】参照)。
3ヵ月間の平均をとることによって、電気料金が突然急騰する事態をできる限り回避する効果があります。
ただし、このようなしくみをとっていても、電気料金が急騰してしまうことがあります。そこで、国民生活や産業に悪影響を及ぼすのを避けるため、「『基準燃料価格』+50%」という金額の上限が設定されています。
ここでいう「基準燃料価格」とは、料金設定時の平均燃料価格、すなわち、基準となる3ヵ月間の平均です。
「基準燃料価格」と現在の燃料価格との間には約3ヵ月のタイムラグがあるので、その間に燃料価格が急騰した場合は、契約者に負担させることはできず、電力会社の「持ち出し」ということになります。
あまりにその状態が続くと、電力会社の経営体力がもちません。そうなった場合に、電力会社は国に「値上げの認可」を申請することになるのです。