(※写真はイメージです/PIXTA)

日本全体の高齢化が進むなか、企業の経営者や社長の平均年齢も年々上がり、「後継者難」はいま深刻な問題となっています。後継者を考える際、まず思い浮かぶのが「わが子」をはじめとした親族ですが、実はこの「親族内承継」が1番ハードルが高いと、永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏はいいます。それはなぜか。また、親族以外に会社を譲りたい場合どうすればいいのか、みていきましょう。

事業承継における「借金引継ぎ」のリスク

事業承継における1番の問題は、後継者選びの過程における「個人保証の問題」です。

 

会社が銀行などから借入を行っていた場合、それはつまり「会社の借金」ですが、多くの中小企業の社長はその会社の借入に「個人保証(=連帯保証)」として入っているケースが多いです。

 

社長がこの個人保証に入っていた場合、社長交代のタイミングで後継者にこれを引き継ぐというのが常ですから、親族外承継においてはここが非常に高いハードルとなっています。

 

つまり、後継者が事業に失敗してしまうと後継者個人の財産が差し押さえられてしまうリスクがあるわけです。

 

したがって、常に会社が健全な経営をしていなければ親族以外はリスクが高く、なかなか後継者を引き受けてくれません。

 

とはいえ、「親族にも任せられないし、社内に後継者になりたい人間がいない」という場合、社長はどうすればいいのでしょうか。

 

これは、最終的には「M&A」という手段を考えることになります。

「M&A」は最終手段

要は「会社を売却する」という選択肢を考えなければいけないということです。「M&A」というのは、基本的には株式を譲渡する方法によって行うのが一般的ですので、1度経営権を手放してしまったらその会社がどうなっても文句はいえません。

 

業態がまったく別のものになってしまう可能性もありますし、先代が大切に積み上げてきたものが一気になくなってしまう可能性もあります。

 

したがって、M&Aを検討する場合は買い手と売り手が理念を共有し、納得したうえで行う必要があります。

 

M&Aのメリット・デメリット

とはいえ、M&Aは「絶対にダメ」というわけではなく、メリット・デメリットそれぞれあります。

 

M&Aのメリットとしては、「広く実績や意欲のある後継者を選ぶことができる」という点です。適切な買い手を選ぶことができれば、「後継者教育」というもっとも時間のかかるプロセスを省くことができ、さらなる会社の発展や継続性を期待できます。「後継者がいない」という問題を簡単にクリアすることができるのがM&Aの利点です。

 

一方デメリットとしては、「魅力のある会社でなければ買い手がつかない」という点と、経営権を手放してしまうために「引退」の色が非常に強く、現経営者としては「リタイアによる喪失感」が大きくなってしまうことが考えられます。

 

まとめ

後継者の「発掘⇒育成⇒交代」と、事業承継はとにかく時間がかかります。適性者がなかなかおらず、何年・何十年かかっても後継者を見つけられないという企業は少なくありません。

 

「65歳で引退しよう」など、引退の時期などを考えている場合、いますぐにでも事業承継の準備をしていく必要があります。

 

ただし、会社の実情によって対策や検討すべきポイントは多岐にわたります。したがって、「なにを重視するのか」、「留意事項はなにか」、そしてこれらを踏まえて選択すべき「最善の手法はなにか」……こういった広い視野を持ち、早期から専門家などに相談をし、事業承継の準備をしていくことが大切です。

 

<<<親族以外に会社を譲るときの注意点【司法書士が解説】>>>

 

 

加陽 麻里布

永田町司法書士事務所

代表司法書士

 

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