(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会のいま、親が認知症になった場合の相続対策はいまのうちから考えておく必要があります。対策を怠った状態で本人の判断能力が低下すると、預貯金管理や諸契約手続きが難しくなるなど、「事実上の資産凍結」に陥ってしまう可能性があるからです。本記事では、永田町司法書士事務所の加陽麻里布氏が、相続対策を怠ることのリスクと、元気なうちからめておきたい具体的な相続対策について解説します。

親が認知症になると「事実上の資産凍結」に

財産を持っている方が認知症になってしまった場合、財産管理※1や身上保護※2などの法律行為を1人で行うことができなくなってしまいます。

※1 財産管理:不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続き
※2 身上保護:介護・福祉サービスの利用契約や施設入所・入院の契約締結

 

実際に自分の預貯金を下ろしたり、不動産の売却をしたりといったことができなくなりますので、これは「事実上の資産凍結」といわれています。

 

このような資産凍結を防ぐためにも、まだ判断能力があるうちに「民事信託(家族信託)」の利用を検討すべきであるといえます。

 

「民事信託(家族信託)」は親が元気なうちしか使えない

民事信託とは、ひと言でいうと「自分の財産を管理できる権限を信頼できる家族等に託し、自分や自分が指定する大切な人の生活や財産を守っていくための仕組み」です。

 

これは「親と子どもの契約」のようなもので、親が元気なうちに信託契約をすることによって、親が認知症になったあとでも、子どもが親の資産を有効活用することができるという仕組みです。

 

基本的に、この制度を利用する場合は弁護士や司法書士などの専門家を入れ、公正証書を用いて実情に応じたスキームを検討するため、将来の“泥沼争族劇”を回避できる可能性が非常に高まります。

 

ただし、この民事信託は「契約行為」となるため、すでに親が認知症になってしまっている場合には利用できません。

 

すでに親が認知症になってしまっている場合に利用できる制度は「成年後見制度」になります。成年後見制度は、大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがありますが、今回は法定後見制度について詳しくみていきます。

 

親がすでに認知症の場合は「法定後見制度」だが、リスクも

「法定後見制度」とは、判断能力に不安がある方を法的に保護していく制度です。判断能力がなくなった場合、それをサポートする人が必要になりますので、医師の診断書をもとに家庭裁判所に申し立てを行い、サポートする人(=後見人)を選んでもらうという流れになります。

 

後見人の仕事は、被後見人の財産を守ることです。したがって、たとえば地主の父親が所持していた複数の不動産(総額約3億円)について、「そのままにしておくのはもったいない……積極的に、売却したり運用したりしていきたい!」と考えた場合には、裁判所の許可が必要となります。

 

ここが、法定後見制度のなかなか使い勝手がいいとはいえない点です。

 

そして、法定後見制度の最大のポイントは「誰が後見人になるかわからない」というところです。親族が後見人になりたいと希望しても、弁護士や司法書士といった「第三者」が後見人になる可能性が十分にあります。兄弟間や親族同士仲が悪いなど事情がある場合、裁判所はそういった実情を考慮して後見人を選定するためです。

 

このような場合、親族としては第三者に財産を管理されることに強い抵抗を持ってしまうケースが少なくありません。

 

また、選ばれた後見人にはだいたい月額2万円から財産状況に応じて毎月報酬を支払う必要があります。

 

認知症になってから使える唯一の手段といえる「法定後見制度」ですが、このようなリスクからなかなか積極的な利用にはつながっていないのが現状です。

 

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