(※写真はイメージです/PIXTA)

近年では、空き家となった故郷の実家や、遠方の山林・農地など、活用できないのに管理の手間や固定資産税がかかる、いわゆる〈負動産〉を相続して頭を抱える人が増えています。そのため国は不要な土地を手放せる「相続土地国庫帰属制度」を創設しましたが、制度の使い勝手はいいとはいえないようです。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

「いらない財産だけ相続放棄」は認められない

筆者の事務所にも「親から不要な土地を相続してしまい、非常に困っている」「不要な土地をどうにかして手放したいが、方法はあるのか?」といった相談が多く寄せられています。

 

遺産相続する場合、仮に財産のなかに不要なものがあったとしても「不要なものを含め、すべての財産を相続する」もしくは「すべて放棄する」の2択しかなく、「ほしいものだけを相続し、不要なものは放棄する」ことはできません。

 

しかし、山や畑など、不要かつ売却困難な土地を相続してしまうと、利用できない土地のために固定資産税だけがかかってくる、という困った状況になってしまいます。

 

問題はそれだけではなく、不要な土地を放置することで荒れ放題となり、生い茂る雑草や樹木の枝の侵入等でクレームが入ることもあります。土地だけでなく、その上に老朽化した建物がある場合は、近年ますます激しくなる台風や豪雨等により、屋根瓦の飛散や建物自体の倒壊などが起こり、周囲に甚大な被害を及ぼしてしまうかもしれません。

 

そのため、面倒ごとから逃げるべく「いらない土地の登記をしない」という選択肢をとる人が多発したのですが、その結果、日本中で所有者不明土地が大発生するという、由々しき事態となってしまったのです。

 

登記がなされないと、土地を収用することも、固定資産税を徴収することもできません。このままでは国土が立ちゆかなくなると判断した国は、所有者不明土地問題を解決すべく、2024年4月から相続登記を義務化。未登記の場合は10万円以下の過料を科すことになりました。

不要な土地、国に引き取ってもらうには「厳しすぎる条件」が…

とはいえ、いくら登記が義務化されたところで、不要な土地は不要な土地です。これをどうにかして処分ができないか…ということで、2023年4月、相続登記義務化と併せて創設されたのが「相続土地国庫帰属制度」です。

 

この「相続土地国庫帰属制度」は、国が定めるルールに従い負担金を支払うことで、国に不要な土地を引き取ってもらえる制度です。申請から承認まで約半年~1年程度かかるとされており、承認が下りてから負担金を納付することで国に土地が帰属する、という流れになっています。

 

しかし、一見画期的に思える制度ですが、どんな土地でも引き取りOKではありません。

 

国に引き取ってもらうためにはかなり厳しく設定されているのです。

 

条件としては、主に下記の6つがあげられます。

 

①土地の上に建物がない

②境界が明確である(山林などは厳しい)

③土壌汚染がない

④通路や水路などではない

⑤担保権や使用権がない

⑥管理が難しくない(山林などは厳しい)

 

もし土地の上に建物がある場合は、解体・撤去してから申請する必要があります。また、担保権や使用権といった地役権の承役地になっていたり、第三者の利用があったりする場合は、申請を行うことはできません。

 

そのほか「管理が難しくない」という表現は非常に抽象的なのですが、坂や高い崖がある場合は承認が下りない可能性があるため、事前に確認する必要があります。

 

もし条件を満たして承認が下りても、その後は負担金や審査手数料を納める必要があります。

 

負担金として12ヵ月分の管理費を払うほか、審査手数料として土地一筆あたり1万4,000円がかかってきます。とくに山林などは筆数が多くなりやすく、かなりの金額になる可能性もあります。

 

とはいえ、承認され、30日以内に負担金を収めることで、所有権は国へと移転します。

 

なお、負担金の金額は地目によって異なります。

 

宅地:20万円

田畑:20万円

森林:面積に応じて算定

その他(雑種・原野):20万円

 

所有権の移転に際した登記などは国が行うため、ご自身が手続きする必要はありませんが、上述の通り、相続土地国庫帰属制度の利用というのはなかなか高いハードルがあります。

 

むしろ、国に引き取ってもらえる条件の土地なら、有償での売却が可能ではないかといわれるほど、基準が厳しいといわれているのです。

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