『ジェイソン流お金の増やし方』で考える今後
「厚切りジェイソン」で考える今後の金融市場と資産運用:節約
『ジェイソン流お金の増やし方(※)』(厚切りジェイソン著、ぴあ、2021/11/12)は、資産運用の初心者向けに、資産運用を手ほどきするものです。その方法は「長期・分散・積立」で、ETF(≒インデックス・ファンド)を通じた米国株式への投資が推奨されています。
(※)本書は出版物の取次大手である日販の2022年ベストセラーランキング3位。帯には「60万部突破」と書かれていました。
まずは、支出を見直すということで、著者の節約術がリストされます。実は、筆者(重見)も実践していることも多くあります。
確かに、家計の見直しは大事です。しかし、筆者であれば、資産運用をテーマにした本の中で、お金の節約は説きません。なぜなら、合成の誤謬があるからです。ひとつの家計にとって節約は大事かもしれませんが、多くの人がそれをやると、景気は悪くなります。
少し脱線すると、もしも岸田政権が金融引き締め・財政緊縮/増税路線に回帰しているのならば、それは、そうした節約を国家規模で進める取り組みです(≒アベノミクスの終わり)。
「誰かの支出は誰かの所得」ですから、われわれが少しずつ支出を増やせば、それはわれわれに所得増や雇用として返ってきます。反対に、われわれが少しずつ支出を減らせば、それはわれわれに失業として返ってきます。
消費によって企業利益は増え、賃上げの原資もでき、増えた家計所得から、資産運用の原資をつくるという循環もあります。節約すると、これとは真逆のことが起きます。
筆者が資産運用で「もうけたい」と思って本を書くなら、読者には支出の増加を説く一方で、自分は節約して資産運用に回すかもしれません。まじめに言えば、筆者なら、お金の節約ではなく、時間の節約(テレビを観ず、本を批判的に読むなど)を説くでしょう。