議長が日本人かベトナム人かで進め方は異なる
Q.ベトナム人と円滑に会議を進めるためのポイントと注意点を教えてください。
A.こちらの説明を理解しているか確認することが大事です。また、グループ活動を伴うワークショップも有効です。
日本企業で働くベトナム人の多くは、日本語や英語を流暢に話しますが、当然、個々によって語学力にはばらつきがありますので、まずはそれぞれの語学力を前もって知っておきましょう。ここでは社内での会議の進め方について説明します。
会議はベトナム人が議長を務める場合、ベトナム語で行い、日本人には通訳がつくのが普通です。例えばベトナム市場開拓に関する営業会議であれば、営業部門のベトナム人のリーダーが議長を務めて会議を進行します。もし日本人が議長を務めるのであれば、出席者全員に発言の機会を与えてください。
また、目標を達成できた社員はしっかり褒めて、さらにモチベーションを高めていきましょう。一方、目標を達成できなかった社員に対しては、その場でしかるのではなく、個室で理由を聞いて来月の目標達成に向けて建設的に話し合いましょう。大勢の前でしかると、ベトナム人は体面を傷つけられたと感じます。
日本人が主体となって行う経営会議などにベトナム人も参加する場合は、前もってアジェンダを作っておくといいでしょう。会議を英語で行う場合は、お互いにとって外国語となるので、こちらの意見が正しく伝わっているか随時確認する必要があります。ベトナム人に理解できたかどうかを確認する場合、「はい(イエス)」と返答したとしても、すべてを正しく理解できているとは限りませんので、必ず内容を復唱してもらいましょう。
ただし、こちらの英語力不足で正しく伝わっていないことも考えられますので、伝え方を工夫することも大事です。ある企業の日本人社長は、ベトナム人との会議で重要な話になった場合、必ず同じことを別の角度、話し方で伝えるといいます。例を挙げたり、説明の切り口を変えたりすることによって、そのうちのどれか一つでも理解してくれればいいと考えるようにしているそうです。
短いスパンでの目標達成の道筋で考えてもらう
経営会議や営業会議で売上など数値の話題になったときは、ベトナム人にはその数値の根拠について説明を求めます。例えばベトナム人が営業目標を設定するときは、どのような計算でその目標数値を算出したのかを尋ねましょう。
ベトナム人は説明が具体性に乏しく、特に先のことに関しては、あまり物事を深く考えないで答えを出すことが時折あります。したがって、年間目標よりも四半期目標、四半期よりも月間目標に重点を置き、短いスパンで目標達成の道筋を考えてもらう方が現実的な話ができます。
また、営業目標に届かないなど、会社にとってネガティブな情報も、率直にシェアできるような風通しのいい職場環境づくりを心掛けることも大切です。
日本企業の中には、ベトナム人社員の自主性と連帯感を高めるために、定期的にワークショップを行っているところがあります。3〜6人のベトナム人が役職に関係なく集まり、一つのテーマに関して討論します。ベトナム人はもともと団体行動を好むため、参加者の中でのリーダーが自然と決まり、議題に沿っておおむね順調に進行していくことでしょう。
ただし、時間配分をしっかりと決めておくことも大切です。あまり討議する時間が長いと、雑談ばかりでゴールが見えてこなくなることもあります。そうなることを防ぐためにも、ワークショップが人事評価の対象となることを事前に伝えるのも効果的です。また、最後に一人一人に感想や意見を発表させるのもいいでしょう。ワークショップでは、たくさん意見を出す人と、そうでない人が出てきます。
ベトナム人は一般的に意見をあまり積極的に言いませんが、それでもあまり発言できなかった人は自分の意見が押しつぶされたと感じるようです。そういう場合、日本人がフォローしてあげてください。あらかじめ全員分の意見を盛り込むなどのルールを決めたり、リーダー的存在の社員に「〇〇さんの意見を積極的に聞いてあげて」などと伝えたりするのもいいでしょう。
ベトナムでは社員の入れ替わりが早いので、会議ごとに初顔合わせとなる社員が出てくることもしばしばあります。その際は、本題に入る前に、お互いが少し打ち解ける時間を設けてみるのはいかがでしょうか。出身地や現在の居住場所、家族構成を尋ねるだけでもベトナム人は盛り上がることができるので、重い空気になることはありません。
相手を呼ぶときは、よほど相手が年上でない限りは、「em(エム)」もしくは名前で呼べばいいでしょう。「em」とは年下の男女に対して使う呼び掛けの言葉です。ただし、名前で呼ぶ場合は、社内に同じ名前を持つ社員が複数いる可能性もあります。その際は、ミドルネームを付けて区別してください。