今回は、日系企業で働くベトナム人と円滑に仕事をするための留意点について見ていきます。※本連載は、雑誌やウェブなど幅広い媒体で活動するベトナム在住のフリーライター・古川悠紀氏の著書、『ベトナムとビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、経済成長著しいベトナムの地で、円滑にビジネスを行うために欠かせない知識やヒントを紹介します。

ベトナム人の意見を聞きすぎると社内の規律が乱れる!?

Q.ベトナム人と円滑に仕事をするためのヒントを教えてください

 

A.ベトナム人と打ち解けることも大切ですが、仕事では厳しく接することが社内の秩序を維持するポイントとなります。

 

ベトナム人社員との関係を適切に築けず、仕事がうまくまわらないという話をしばしば耳にします。聞くと、社内がどれも似たような状況になっていることが多いようです。関係を適切に築けないケースは、ベトナム人社員と仲良くやろうとして、風通しのいい社風を目指した傾向にあります。

 

日本では、たとえベンチャー企業にあるような自由でフランクな社風であっても組織の規律を大切にし、メリハリをつけて仕事に取り組み、部下は上司に礼儀を欠かない場合が多いでしょう。しかし、ベトナムではこちらが垣根を低くすると、社内の規律が乱れることがあります。

 

例えば、何かを決めるときに、その都度ベトナム人の意見を聞いていると、彼らは会社が自分たちの思いどおりになると勘違いすることがあります。また「これをコピーして」と頼むと、「なんで私が?」と不快な表情をします。そこで日本人が遠慮して自分でやったり、ほかの人に頼んだりすると、「私がやる必要はない」と思い込んで、その後も断り続けることでしょう。

 

そのような勤務態度や言動を「ベトナム人だから仕方ない」と許していると、「自分の自己主張ばかりしている」「立場をわきまえない発言をしてくる」「上司の指示を聞かない、断ることがある」「遅刻が多くなる」といった問題が出てきます。この時点で規律や秩序を取り戻すのは非常に困難です。

 

ベトナム人は人懐っこい性格の人が多いので、多少の無礼や規律を乱す行為をつい許してしまいがちですが、一度認めると、勘違いをする可能性があります。この点も頭に入れて接することが大事です。

 

新卒の新人社員はもちろん、キャリアを積んだ転職組であっても、ベトナム人はいわゆる「報連相(報告・連絡・相談)」がほとんどできていません。特にミスを犯したときに自己判断で処理するクセがある人は、自分の失敗が公になるまで報告も連絡も相談もしません。「もっと早く知らせてくれたら、問題が大きくならなかったのに」という過ちを何度も繰り返します。

 

日本人が直接彼らを管理しようとすると、すべての行動を把握する必要があるので、現実的ではありません。通訳者を一人付けて、彼らの行動に目を配ってもらい、時には相談役も務めてもらうといいでしょう。

「贈り物やパーティー」で日ごろの労をねぎらう

最近は社内業務を行うために必要なスキルを学ぶ教育研修を、業務時間終了後に週1〜2回行う企業も増えてきました。日本企業への就職を志望して入社してきたベトナム人は、一般的に意欲も高いはずですので、こちらも相応の姿勢で取り組むことが大切です。

 

ベトナム人には1.5人分の仕事を常時任せるのが、モチベーションを高めるコツです。2人に3人分の仕事でもいいでしょう。器用な社員であれば、与えられた仕事を予想以上に早く仕上げてくれます。

 

問題は、仕事が片付いたのに次の仕事に取り掛からず、上司からの確認があるまで、フェイスブックやオンラインゲームをして暇つぶしをしてしまうことです。2人で3人分の仕事を与えると、時間内に終わらせるよう協力・工夫して効率化を図ろうとしますし、お互いが仕事をさぼらないようチェックの役割も果たしてくれます。

 

ベトナム人社員と打ち解けるには、ベトナム企業が実践していることをまねてみるのが近道です。例えば、3月8日と10月20日は女性の日で、男性は女性にプレゼントを贈る習慣があります。これは何も恋人の間だけではありません。会社でも男性社員は女性社員に花を贈りますし、男性上司は部下の女性に香水や化粧水などを贈ります。

 

また、社員の誕生日にはバースデーケーキを買って、みんなで一緒に食べてお祝いします。毎月一度は飲み会を開き、社員と親睦を深めるのも中小企業の間では一般的です。休日を利用してベトナム人と交流を深めるのも有効です。

 

例えば社員を自宅に招いてパーティーを開いたり、フットサルやテニスなどのスポーツで一緒に汗を流したりするのも効果的です。そのほか、クリスマスや旧正月休み前に、レストランなどで日ごろの労をねぎらうのもいいでしょう。

 

また、予算がつけば社員旅行や運動会といった大型イベントも検討してみてください。しかし、これらを企画するときは、必ず家族同伴を許可することが大切です。この手のイベントは夫婦で参加するのがベトナムでは普通ですので、社員限定にすると、参加率が悪くなるだけでなく、ケチだと思われてしまいます。

 

社員と個別に打ち解けるためには、日々の会話が大切です。その中でもベトナム人と距離を縮めるキーワードが「田舎」です。相手の出身地を聞いて、興味を持つこと。ベトナム人は自分の田舎を大切にしているので、興味を持ってもらうとうれしく思い、喜々として語ってくれます。そのほか兄弟や家族、趣味の話などもいいでしょう。

 

また、簡単でもいいので、ベトナム語で話してみることも大切です。ベトナム人に限らず、外国人が自分の国の言葉をしゃべってくれるというのは、誰でもうれしく感じるものです。

ベトナム人は勤勉な人が多いが、ある程度のコントロールは必要
ベトナム人は勤勉な人が多いが、ある程度のコントロールは必要

本連載は、2016年6月21日刊行の書籍『ベトナムとビジネスをするための鉄則55』から抜粋したものです。その後の社会情勢等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

ベトナムとビジネスをするための鉄則55

ベトナムとビジネスをするための鉄則55

古川 悠紀

アルク

中国に代わる生産拠点として従来から注目を集めるベトナム。経済成長を続ける人口9000万の若い国は市場としても将来性に富み、日本企業の進出が着実に増えています。本書では、ベトナム人やベトナム社会に関する基礎知識、仕事…

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