今回は、ベトナム国内の税制の概要について見ていきます。※本連載は、雑誌やウェブなど幅広い媒体で活動するベトナム在住のフリーライター・古川悠紀氏の著書、『ベトナムとビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、経済成長著しいベトナムの地で、円滑にビジネスを行うために欠かせない知識やヒントを紹介します。

ベトナムの領収書「青ビル」と「赤ビル」の違い

Q.ベトナムの税制について、最低限知っておくべきポイントを教えてください。

 

A.日本人になじみのないレッドインボイスや外国契約者税の概要は知っておいた方がいいでしょう。

 

ベトナムの税制は不定期によく変わります。税務署でさえ把握しきれていない場合があり、トラブルもしばしば発生します。特に進出間もない外国企業の現地法人などには勝手が分からない部分もあるでしょう。ベトナム人の経理担当だけでは手に負えないことも多いので、日系の会計事務所に相談することを強くお勧めします。

 

●所得税
法人所得税は25%でしたが、2014年に22%に下げられ、2016年にさらに20%へと引き下げられました。社員の個人所得税は、給与区分に準じた変動税率です。具体的には、月額1800万ドン超3200万ドン以下は20%、3200万ドン超5200万ドン以下は25%、5200万ドン超8000万ドン以下は30%、8000万ドン超は35%の所得税が課せられます。

 

注意点は、出張者などのベトナム非居住者も、ベトナムを源泉とする所得があった場合は課税対象となり、例えば給与所得なら20%が源泉徴収されます。もし現地法人側で出張者に給与を支払うようなことがあれば、注意が必要です。ただし、出張者は日本で外国税額控除を受けることができます。

 

●レッドインボイス
「赤い領収書」と直訳できるレッドインボイスは、在住日本人の間では「赤ビル」と呼ばれ、ベトナムで仕事をする上で必ず覚えておかなければならないものです。ベトナムにおいて、領収書は2種類あります。誰でも発行できる「青ビル」と、会社登記していなければ発行できない「赤ビル」です。

 

赤ビルは会社によって書式やデザインが若干異なりますが、色が赤いので区別に困ることはないでしょう。税務署への申告に使用できる領収書は、この赤ビルのみです。法人同士の商取引は、原則的に赤ビルを介して行われます。法人でない個人商店や市場などで買い物をした場合は赤ビルをもらえないので、経費を損金算入できません。赤ビルの発行には、支払い側の税コード(MST)が必要です。

 

駐在員の中には、自分の名刺に税コードを記載している人も多くいます。また、ベトナム企業の多くが会社の看板に税コードを記載しています。

 

●付加価値税(VAT)
付加価値税とは、物品やサービスに対して課される税金で、日本でいう消費税に該当します。ショッピングセンターなどで買い物をしたときに、10%の税金が加算されていることがレシートを見ると分かります。

 

基本は10%と思って問題ありませんが、水や肥料、畜産物、農産品などは5%であるほか、医療、教科書や新聞の出版、ソフトウエア、輸出は非課税です。ただし、輸出取引で付加価値税免除を受けるには、通関書類や銀行の送金証明書などの提出が必要です。輸入は免除対象にならず、関税と一緒に税関に支払います。

ベトナム特有の税金「外国契約者税」とは?

●外国契約者税(FCT)
外国契約者税はベトナム特有の税金です。外国の個人・法人がベトナムの個人や法人にサービスを提供する際、その対価である所得などに課されるものです。付加価値税の部分と法人所得税の部分で構成されます。

 

物品はFCTの課税対象ではありませんが、サービスと物品両方の取引があった場合は、申告書に内訳を記し、サービスの種類と税率を明記する必要があります。なお、通常は、外国企業が外国契約者税を負担しますが、ベトナム企業が源泉徴収し、納税することになります。

 

●駐在事務所の税金
市場調査や情報収集を目的に設立された駐在事務所は、法人税や付加価値税などの税金が免除され、基本的には個人所得税のみの申告となります。ただし、この課税方法をめぐるトラブルが絶えず、在住歴が長い日本人でも、多額の罰金を支払うこともあるほどです。

 

税務調査では、駐在員の個人所得を綿密にチェックされます。日本からの給与がドル建てドン払い、もしくは円建てドル払いの場合は、為替レートも細かくチェックされます。航空券代や出張手当など、どこまでを個人所得として計上するかも、会計事務所や顧問弁護士などに相談した方がいいでしょう。

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    本連載は、2016年6月21日刊行の書籍『ベトナムとビジネスをするための鉄則55』から抜粋したものです。その後の社会情勢等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

    ベトナムとビジネスをするための鉄則55

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    古川 悠紀

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