(※画像はイメージです/PIXTA)

ふるさと納税はよく「節税」の方法として挙げられる方法の一つです。しかし、しくみをよく検証すると「節税」にならないどころか、場合によっては自分自身の首を絞め、地方も国も「先細り」になるリスクさえあるというショッキングな側面が浮かび上がります。本記事では、ふるさと納税のしくみと問題点について解説します。

ふるさと納税の4つの深刻な問題点

しかし、現状、ふるさと納税には以下の4つの問題点があります。利用するのであれば、これらについて十分に理解しておく必要があります。

 

1. 地方自治体のトータルでの税収が減る

2. 自治体の行政サービスの質の低下・削減につながるおそれがある

3. 自治体の魅力により格差が生じる

4. 高額所得者ほど得をする可能性がある

 

それぞれについて解説を加えます。

 

◆問題点1.地方自治体のトータルでの税収が減る

第一に、地方自治体のトータルでの税収が減るということです。

 

すなわち、ふるさと納税を利用する人の多くは「返礼品」目当てです。その場合、「返礼品の市場価格-2,000円」の分だけ得をすることがあります。

 

しかし、その分、すべての地方自治体のトータルでの税収は減ることになります。それに加え、ふるさと納税を受ける側の自治体でも、「さとふる」や「楽天ふるさと納税」といった仲介サイトへの手数料の負担、ふるさと納税に関する事務負担や返礼品を届けるための送料の負担があります。

 

これらを考慮すると、日本全国でみれば明らかにマイナスです。

 

◆問題点2.自治体の行政サービスの質の低下・削減につながるおそれがある

次に、ふるさと納税により、自治体の行政サービスの質の低下・削減が生じるおそれがあります。

 

すなわち、ふるさと納税を行うことで、「寄付額-2,000円」の額の税収を他の自治体に流出させることになります。

 

それにより、自分が住む自治体の税収を減らすことになります。積み重なれば、行政サービスに支障が生じ、質の低下あるいは削減につながるおそれがあります。

 

地方自治体の行政サービスには、「ごみの収集・処理」、「上下水道」道路、公共施設等の「インフラ整備」など、住民の日常生活に欠かせないものが多いのです。ふるさと納税を行うことは、自分自身の首を絞めることになる可能性があります。

 

たとえば、東京都世田谷区では、ふるさと納税により2022年度は87億円の財源が流出したとされています(世田谷区報2022年10月2号参照)。しかも、世田谷区は地方交付税の不交付団体であり、減収額を補てんしてもらうことができません。

 

地方交付税交付団体であれば「交付金」により赤字を補てんしてもらうことはできます。しかし、交付金の財源は結局「国の税金」です。納税者の立場からすれば、昨今増税に邁進する国に対し、ますます増税の口実を与えることにもなりかねません。

 

◆問題点3.自治体の魅力により格差が生じる

自治体の魅力によって格差が生じるという問題もあります。

 

「名物」「名産品」等のブランドイメージが乏しい自治体や、目立った産業がない自治体にとっては、ふるさと納税の制度は逆効果になる可能性があるということです。

 

すなわち、ふるさと納税を行う人の大半は返礼品が目当てです。魅力的でお得感のある返礼品を用意することができなければ「詰み」です。

 

また、無理に「返礼品競争」に参入しようとすると、それだけでも大きな負担となります。

 

さらに、そのような自治体で住民が他の自治体へのふるさと納税を行えば、ますます財政難が加速します。

 

本来、救済されるべき自治体とは、ブランドイメージもなく目立った産業もなく、過疎化や財政難にあえぐ自治体であるはずです。ところが、そういう自治体に対してはふるさと納税の制度はメリットがないばかりか、逆効果になる可能性すらあるということです。

 

なお、ふるさと納税の制度の導入を推進したのは、菅義偉元首相(当時、総務大臣)です。新自由主義者である彼の考え方からすればそれも「自己責任」ということになるのかもしれません。しかし、なんでも自己責任で済むのならば政府も国会も不要ということになります。

 

◆問題点4.高額所得者ほど得をする可能性がある

最後に、ふるさと納税は、高額所得者ほど得をする可能性があります。

 

第一に、先述したように、ふるさと納税の限度額は所得によって決まっており、高額所得者ほど大きくなっています。しかも、いずれ寄付額が2,000円が控除されて返ってくるとはいえ、一時的にまとまった額がキャッシュアウトすることになるので、その意味でも、金銭的余裕がある人ほど有利な制度です。

 

第二に、寄付金額が高いほど返礼品の市場価値が高くなる傾向があります。先ほど例に挙げた「1万円相当のクエ鍋セット」も、「2,000円相当の銘米ふさおとめ5kg」も、自己負担額2,000円で受け取ることができます。したがって、寄付額の大きい高額所得者ほど得をする可能性が高いといえます。

 

ふるさと納税には「経済効果」等の効用があるという指摘もあります。しかし、本記事でお伝えしたような様々な問題は厳然として存在しています。

 

政府・国会には今後、それらの問題点を直視し、克服していくことが求められます。また、私たち国民も、ふるさと納税を行う場合は、十分に理解したうえで行う必要があるといえそうです。

 

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