現役時代の働き方を生涯続けるべきなのか?
このように中高年の転職市場がうまく機能していない要因には、求職者側と受け入れ企業側の双方に課題がある。
そして改めて当事者の観点でこの問題を振り返ってみたとき、現役時代の延長線上での働き方を本当に生涯を通じて続けていかねばならないのかということについては、一人ひとりが現在の自身の状態や家計の状況と向き合いながら熟考する必要もあるだろう。
なぜなら、定年後の家計は、定年前の家計とその様相をがらりと変えるからである。
他者との競争に打ち勝って、名のある企業で高い役職を得るというキャリアを一心に追い求め続ける人は多いが、定年後もそうした働き方を追い求めることが本当に自身にとって望ましいことかと考えると、実はそこまでの働き方は必ずしも必要ではないということも多い。
自身の頭で考え抜けば、必ずしもそういった働き方がキャリアのすべてではないと気づく瞬間が、誰しも訪れるものである。もちろんそれが50代になるのか、あるいは60代前半または後半なのか、70代以降なのか、そのタイミングは人によって異なる。高齢期のキャリアにおいては、自身の家計の状況とも相談しながら、仕事を通じて自身が何を得て、社会にどう貢献していくのかを考えていかなければならない。
縁故、ハローワーク、求人広告など入職経路は多様
中高年の転職市場は厳しい。こうしたなか、ある人は長く勤めてきた企業を離れて短時間就労などで働き方を変えながら、またある人はこれまでの延長線上での働き方を模索しながら、人は定年後も働き続ける選択をしている。
続いて確認していくのは、定年前後に転職をする際にどこから自身の就職先を見つけてくるのかという点である。
厚生労働省「雇用動向調査」から転職者の入職経路を捉えたデータをみると、現役時代と定年後では職の探し方もいくつか異なる傾向が見て取れる[図表1‐21]。
まず一目見て気づくのは、定年後、特に60代前半の人については、前の会社からの縁故によって就職が決まるケースが多いということである。
これには同じ会社で再雇用されるケースが多く含まれている。先述の通り、現在では高齢法の定めによって、企業は65歳までの継続雇用制度の導入を義務付けられている。
雇用動向調査では、定年を機に雇用契約を見直して、同じ職場に再雇用になるケースも、その会社を離職して直後にその会社に入社したものとしてカウントする。このため、60代前半の22.8%、60代後半の12.9%のなかには同一会社への再就職が多数含まれているものと考えられる。
このデータからは、この数値のうちどこまでが再雇用による同じ会社への入職で、どこまでが前の会社の斡旋による他企業への再就職なのかは明らかでないが、おそらくは前の会社から斡旋されてほかの会社に就職するというケースはそう多くないのではないか。