(※写真はイメージです/PIXTA)

原油や天然ガスなどの原材料価格が高騰し、製造コストを圧迫する現状では、値上げに踏み切らなくては下請け製造業に未来はない、と700社を超える中小製造業の経営改善を支援してきた大場正樹氏は言います。本連載では、「値上げできない」は多くの中小製造業の思い込みであると語る大場氏が、「インフレ時代に生き残るための値上げ」について、交渉に勝つ価格設定や、実際の交渉テクニックなど具体的な戦略をわかりやすく解説します。

それでも価格交渉はしたくないですか

値上げするのは気が進まないという気持ちはよく分かります。

 

正確にいえば値上げ自体は利益アップにつながるのでいいのですが、それを取引相手に伝えるのは誰しも嫌なものです。

 

実際、過去20年間にわたって値上げはご法度(はっと)でした。デフレなので常に「もっと値下げできないか」と言われてきて、値上げした会社は何か理由があっても「高くなった」と言われて市場からはじかれるのを見てきました。値上げはできないというのは経験からくる判断で、これまでは正しかったと思います。

 

しかし、これからは値上げをせずにやっていけるとはいえません。本当は値上げしたいけれども、万が一のことを考えると言いだせないというのが経営者の本音のはずです。

 

私が見聞きしている範囲では、すでに値上げしている会社はいくつもあります。もしかすると競合相手のなかにも値上げしている会社があるかもしれません。

 

それは確かめてみないと分かりません。もし価格交渉に成功した会社があったとしても、苦労してあげた成果をわざわざ競合に教えようとは思わないはずです。取引相手だって「値上げは吞みますけど、ほかの会社には内密でお願いします」くらいのことは言うでしょう。

 

なぜならすでに値上げに成功したという事例があれば、ほかの会社も交渉の説得材料が増えてやりやすくなるからです。競合を利することをしたくない会社と、他社に値上げをさせたくない会社とが取引すれば、話は水面下にとどまります。

 

もしかするとそのうちに、自分の会社だけが従来の安い価格で耐えていた、なんてことにもなりかねません。もちろん、その価格で十分な利益が出るのであれば、注文を全部奪うつもりで頑張るのもよいでしょう。

 

しかし、赤字ぎりぎりの価格でやっていて受注が大きく増えても、設備投資をして人も増やして、従業員は安い給料で過酷な環境で働かなければならないとなったら、これは地獄です。だからこそ早急に社長自ら意識を変え、値上げへの第一歩を踏み出すべきなのです。

 

※本連載は、2022年9月27日発売の書籍『インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術』から抜粋したものです。その後の制度改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術

大場 正樹

幻冬舎メディアコンサルティング

バブル崩壊から30年、デフレが続いた日本を未曾有のインフレが襲う。 「値上げできない」という思い込みからの脱却が 原材料価格の高騰に苦しむ下請け製造業の活路を拓く。 これまで700社を超える中小製造業の経営改善…

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