経営者にとって「専門外」なDX…どう理解する?
日本全体の経営者において、IT技術出身者はそれほど多くはありません。一方、経済産業省のDXレポートでは「経営者自らの関与、コミットが必要」だと提言されています。重要な意思決定権限をもっている経営者が、専門外のIT技術をどう理解するかは、重要なテーマです。
DX実現には、広範なIT技術を駆使することになりますが、なかでも「デジタル・トランスフォーメーション」というワードから、「デジタル技術」に注目が集まっています。
デジタル技術は、まるで新しい技術用語のように語られますが、コンピューター技術の基本中の基本です。コンピューター基礎テキストの最初の章は、デジタルデータのベースである「0」「1」の二進数の勉強から入ります。
ここで重要なことは、デジタル技術はその対象となる「データ」に着目すべきということです。言い換えれば、経営者は技術の詳細内容よりも、その技術によりデータがどう変わるか、どう活用されるかを理解すると、その技術の勘所がわかってきます。
たとえば、AIの先端技術である機械学習(ディープラーニング)は、膨大なデータから傾向や法則性を見つけ出し(学習)、そこで生成された判断基準(推論モデル)に、ターゲットデータ(例:画像)を入力すると、そのデータが何(例:猫)であるかを自動判断するというデータ処理です。
デジタル化の第1歩は「データの見える化」
それでは、DX分野におけるデジタル化とはどういうことか考えてみましょう。
「デジタル」の対極が「アナログ」ですが、アナログデータとは「コンピューターでダイレクトに処理ができないデータ」と考えるとわかりやすいでしょう。紙で書かれている文字や数字情報をはじめ、人の行動パターン(消費者行動心理、匠の技)、微妙な色調、音色などが挙げられます。
「アナログデータをコンピューターが理解できるデジタルデータにすること」がデジタル化の第1歩です(「デジタイゼーション」)。
デジタル化の目的の1つとして挙げられるのが、「見える化」です。クラウドにデジタルデータが収集できれば、後はコンピューター処理により加工し、見やすく表示することができます。「見える化」することで、意思決定の正確性とスピードが増します。
例としては、経営や販売などの大量のデータを分析し、それをビジュアライズして表示することで意思決定支援を行う「BI(ビジネスインテリジェンス)」や、IoT技術を活用して工場の現場の状況を収集し、生産管理システムと連携して、生産性向上や品質向上を支援する「工場見える化システム」が挙げられます。
ただし、「見える化」はデジタル化の第1歩ですが、そこで終わっているシステムが多いのも事実です。「見える化」の次の工程は「人的処理」になりますが、「システムは完成したものの見る人がいない」という声はよく聞きます。